2012年2月19日日曜日

我々は、モダニズムの時代に住んでいますか?

みんなの糖尿病ストーリー:ポストモダン(8):相対主義的現実


これまで「ポストモダン」という大変難しいテーマを扱い、しかも簡単な表現で説明することができず、大変申し訳ないと思いながら書いてきましたが、今回の記事で「ポストモダニズム」を終了したいと思います。今日、最後に取り上げたテーマは「相対主義的現実」です。まず、野口裕二著「ナラティヴの臨床社会学」から引用した次の1節をご紹介します(p140)。

ポストモダニズムの考え方は、われわれが自明のこととして疑うことのなかったさまざまな原理や観念の有り様を、近代という時代の特殊歴史的な産物として相対化する。それらは決して普遍的な原理ではなく、それらを普遍的な原理と思いこませていたのが近代(モダン)という時代なのだという視点に立つ。

写真:今日犬の散歩で、善福寺川公園� �通りかかったとき、見上げた木々の枝です。私は「木」を撮るのが好きです。


ポストモダニズムは文字通り「モダニズム以後」を意味し、モダニズムを相対化する思想や運動を広く指し示す言葉として用いられている。従って、モダニズムまたはモダニティーをどう捉えるかによって、強調点は異なってくる。ここではリオタール(Lyotard,1979)にならって「遂行性」の重視という特徴に注目しよう。遂行性とは、「システムのインプット全体とアウトプット全体の関係性の最適化」のことであり、いわゆる効率性の追求とほぼ同義と考えて良い。そして、遂行性を高めるために、システムの制御、改良、合理化といった目標が具体化してくる。モダンという時代はこうした目標を自明の前提として展開してきた時代といえる。しかし、こうした展開を正当化し基礎づける理論(「� ��きな物語」)はすでに失墜している。にもかかわらず、システムの遂行性を追求する運動だけが自動運動のごとく展開している、というのがポストモダニストの基本的認識である。こうしてモダンを支えてきた、さまざまな価値前提に批判の目が向けられる(p139)。

社会心理学者ガーゲン(Kenneth J. Gergen)の社会構成主義的観点
1.社会的常識は長い時間をかけた文化的歴史的産物である。
2.
社会的知の構築は、言語的相互作用の中でなされていく。
3.社会的行為に伴う随伴現象は、その行為をどのように意味づけるかによって変わる。

■これまで説明した「ポストモダン」の考え方
1.社会構成主義的世界観
現実は私たちの言説によってつくられ、同時にそうしてつくられた現実によって、私たちの生き方が制限されると考えます。絶対的なる真実は存在せず、すべては社会的に構成されたものであると考えます。


2.社会構成主義的自己と自己物語
私たちは「語りながら、その都度『自己』をつくり直し、確認し、語りながら『自己』を生み出し、修正補強しながら、「自己」を確認していきます。はじめから確固たる「自己」というものが存在していて、それが自己を語るのではなく、自分の語る語りが、その都度「自己」をつくると考えます。自己とは「自己語り」であり、この自己物語は、「現在」の自分を説明するように、「過去」を配列し、整理し、意味づけます。しかし同時に、私たちは、社会的に構成された物語(支配的物語)の影響をいつしか受け、それに制限される存在でもあり、ときに、その物語によって苦しむようになります。こうしたクライアントを苦しめている人生物語(「支配的物語 ドミナント・ストーリー」をじっくりと聴き、問題を外在化し(影響相対化質問法)、クライアントから問題を切り離し、新しい主体性を取り戻した人生物語、「オルタナティヴ・ストーリー alternative story」へ書き換えていく心理療法を「ナラティヴ・セラピー」といいます。


3.新しい専門家−非専門家関係の構築
絶対的な真実というものの存在を認めず、すべてをひとつの物語として相対化することによって、専門家と非専門家との間に存在していた上下関係を排除し、非専門家の自由な語りの空間を確保する、水平で対等な関係が生まれました。

■最後に
長い間、「ポストモダン」という大変難しいテーマにお付き合いくださり、有り難うございました。今、ケネス・J・ガーゲン著「あなたへの社会構成主義」を手に取っています。目次を見ると、とても魅力的です。今の私には、この分厚い訳本を読み通す余裕はありませんが、いつか読破して、もっと平易な表現で、皆さんに説明できるようになれれば・・・と思っています。
詳しく書けばきりがなく、正確な記述をするためにはあまりに勉強不足な私ですが、"今の私の知識で書ける範囲で"という条件で書かせていただきました。間違いも多いと思いますが、今後勉強しながら、少しずつ書き直したり、書き加えたりしていきたいと思います。

参考文献
1.野口裕二著:「ナラティヴの臨床社会学」、勁草書房
2.楡木満生著「ナラティヴ・セラピーの理論と実際」、ナラティヴと保健医療、p47〜56、日本保健医療行動科学会



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