2012年6月3日日曜日

佐藤一郎: Web日記 (2012年)


もともとは研究用ソフトウェアの開発履歴に関するページだったのですが、開発関連よりも雑談の方が多くなったので、2001年分から別のページを用意することにしました(過去のページの一覧はこちら)。リンクは勝手にしてください(でもリンクしたい人なんているのでしょうか)。それから海外出張の写真一覧はこちらにのせてあります。筆者のプロフィールはこちらです。SNSは苦手なのですが、Twitterもはじめてみました(ichiro_satoh)。なお、このページはRSSに対応していませんが、外部のを使うとRSS購読もできるそうです(当方は関知していません)。下記はあくまでも個人の意見であり、組織を代表するものではありません。

2012年6月1日

とうとう6月。信じられません。今月前半は怒濤の忙しさになりそう。乗り切れるかなぁ。

2012年5月31日

Paxosについて聞かれることがあるので、少々。PaxosはL.Lamportが提案した分散システムの耐故障性をもつ分散同意アルゴリズム。同意アルゴリズムというのは各コンピュータで同じ値を持つことを保証するアルゴリズム。それが簡単なようで難しいのが分散システム。なんでPaxosというかというと、L.Lamportは分散システムにおける故障の問題をビザンチン(東ローマ帝国)における将軍の裏切りにメタファにおいた論文"The Part-Time Parliament"を書き、その後は同種の問題はビザンチン問題と呼ばれ、定番専門用語になったのですが、それの再来を狙ったのか、ギリシャのPaxos島で永遠に議論を続ける逸話にメタファにして、彼の新しい分散同意アルゴリズムを説明したのでした。ただ、この論文は非常に難解。その当たりの背景は彼のノートを見てください。その後に国際会議PODCで、彼自身の簡易なPaxos解説を文章化したのが"Paxos Made Simple"という論文。だから、手っ取り早くPaxosを理解したいならば、こちらを読むべきでしょう。

ちなみに1998年に論文"The Part-Time Parliament"が論文誌ACM TOCSに掲載されたときは、投稿から10年して、引出で発見されたとか、Lamportは考古学者になったとか、ジョークが書かれており、それで話題になりました。というわけで当方も読んでみましたが、まったくというのほど理解できませんでした。もうすこし正しくいうと何をしたいのかという課題設定すらわかりませんでした。

そのあとにLamport自身を含めて数多くの拡張が行われます。そのあたりは分散アルゴリズムとしては面白いのですが、もしPaxosを実装するうえで重要なのはChandraの"Multi-Paxos"の論文でしょうね。"Multi-Paxos"はGoogleのChubbyのベースになったPaxosに関するもの。もうひとつは埋もれていたPaxosを注目されることになったLampsonの論文と、Jim GrayとLamportの共著論文。このあたりは読んでおくといいでしょうね。なお、分散アルゴリズムの研究者は、一般のアルゴリズムの研究と同様に、アルゴリズムそのものよりも、アルゴリズムの証明に注力する傾向があり、実装に向かないアルゴリズムも多いのです。

2012年5月30日

今回の出張は先方持ちということで、前からいきたかった九州国立博物館にいってみる。途中で、高名なマイケル・サンデル教授と話すことになったり、いろいろ体験をすることに。昼過ぎには福岡空港から羽田に移動。

2012年5月29日

福岡で講演。最初の講演なのに時間オーバーして、後の講演に迷惑をかける。反省でございます。

2012年5月28日

午前中は慶大の大学院授業「計算モデル」、夕方は勤務先の大学院「分散システム」。後者はひたすらデータ複製の話。ご参考に授業用資料をここにおいておきます。分散システムではデータ複製は、性能改善及び信頼性向上では必須技術なので、丁寧に教えておかないといけないところ。原始的なPrimary Backup方式(データベース屋さんだとPrimary Copy方式)が妙に詳しいのですが、なんだかんだといって一番多く使われているので、Quorumなど新しい技術を知る上でも、定番手法とその損得をきちんと理解しておくことは必須。

ここ数年は分散システムが実務でも広く使われるようになったためか、特定の流行手法についてだけで、手短に教えてほしいとよく頼まれます。でもそれって教わる方にも、無意味なのですよね。例えば数学でいえば、代数的素養がないのに圏論だけ教えてくれ、といっているので同じ。さらに分散システムで求められる機能の多くは複数の手法で実現できます。でもそれぞれの方法には損得があります。だからそのうちの手法のひとつだけをしっても仕方ない。同じ機能を実現する複数手法を含めて体系的に勉強しないと理解できない。遠回りに見えて、体系的に勉強すべきで、例えば流行の勉強会のように単発または数回の講座でわかるほど浅くない。その意味では大学院などできちんと勉強した方がいい分野。ちなみにこの授業で� ��、上述の資料を90分の授業2回分なのですが、それ以外に補足する論文が5本、論文1、論文2、論文3、論文4、論文5でした。最新知識はどんどんアップデートされていくので、結局、論文をおうしかないのですよね。古い論文も含まれますが、毎年、補足論文は入れ替わっています。

また分散システムはOSほど技術が整理されておらず、技術と技術が独立ではない。例えば二つの技術を例にとります。一つは分散同意アルゴリズムは相違なコンピュータ間で値を共有するためのアルゴリズム。もうひとつは原子ブロードキャスト、これは多数のコンピュータにデータが送信して、受信時に他の通信と順番が入れ替わらないように通信する方法。つまり前者は状態に関するアルゴリズム、後者は通信手法。前者で後者をエミュレートできるし、後者で前者をエミュレートできます。原子ブロードキャストというのは分散同意アルゴリズムと同じで、受信者に同じ値を渡しているわけですから。分散システムの諸技術は一見違うようですが、実は同じだったり、一方が別の技術と衝突したりで、やっぱり体系的に勉強した方� �いいんですよね。

2012年5月27日

論文を読むのは仕事の一部ですが、正直いって、難しくてわからない論文に出会うことが多い。研究者には、難しくてわからなかったということをいわない方が多いのですが(なんでもわかる方もおられるでしょうが)、当方はというと、自尊心というのが希薄なこともあり、難しくてわからなかった論文、自分には難しくてわからなかったと、まわりの研究者にも学生さんにも堂々といってしまう。むしろ、わからないことをわかったふりをすることは研究者としてはしてはいけないことだと思っているから。

逆に学生さんをみていて、伸びない学生さんというのは共通点があって、勉強する場合でも、論文を読む場合でも、自分が理解していること、知っていることを確認するために教科書を読んだり、論文を読んだりしています。受験勉強ならばそれでもよかったかもしれませんが、自分の頭の良さや知識の多さを確認しても意味がない。むしろ、自分がわからないこと、知らないこと、気がつかなかったことを見つけることが大切。その辺のモチベーションの違いが大きな差になって表れますね。

それと独善的に聞こえるかもしれませんが、むしろ自分がわかるか否かを研究の評価軸だと思っています。わからない論文に出会ったら、自分がわからないのだから、わかる人は窮めて少数と判断しています。多くの場合は論文のプレゼンに問題があるのですが、コンピュータサイエンスも深化が進んでいて、難解な理論や難解なシステムは増えています。ただ、難しいと感じるような方法は実装が技術的に難しかったり、また実装する人がいなかったりします。だから難しいということを見極める感覚はたいせつ。

2012年5月26日

ニコンのD800Eを使わしてもらう。レンズは純正の24-70mm f/2.8。正直いって当方の腕では使いこなせない。IRフィルターなしの3600万画素はピント部分とそれ以外がはっきりわかり、オートフォーカスを使うにしても、フォーカスした部分に相当しっかり合焦させないとピントがあってないことが丸わかり。それと一眼レフならば1/30秒ぐらいならば、風などの悪条件でもなければ、ブレない自信があったのですが、解像度が高いのでブレがまるわかり。ISO値を上げて、シャッター速度を稼がないと手持ちはちょっと辛いかもしれません。ミラーの振動を拾ってしまうという話がありましたが、頷ける感じ。人は撮りませんでしたが、わずかな木々の揺れでぶれます。それとF値を大きくすると回折がわかりますね。教科書的には知っていましたが、実感できたのは初めてでした。カメラ雑誌のレビュー ではないですが、使ったのはズームレンズとはいえ、35mm(135)用レンズの限界を超えています。逆に言うとキヤノンが5D-MK3で、画素数を上げなかったのは正しいかも。というわけで次は5D-MK3を借りるチャンスを狙います。でも正直いって大きな一眼はもういいかも。だって重いの辛いから。

2012年5月25日

仕事柄、SI企業のPMさんやシニアSEさんと話すことが多いのですが、自分が関わっているシステムに使われている技術を知らない人が多い。これは研究者にもいえるのですが、技術的にわからないことを、わからないといえないと、どんどんわからないことが増えていく。PMさんだと立場上、技術に精通しているという立場だから、技術上の初歩的な疑問は聞きにくい。そこできかないと、わからないことが上積みされていくんですよね。なんでこんなことを書いたのかというと、最近、比較的若いSEさんでも増えているように思ったから。SI企業が設計工程の上流にシフトするのはいいのですが、下流の技術を驚くほど知らない。恥ずかしがらずに現場に聞けばいいと思うのですが、できないのですかね。最近、SI企業の技術力の低下が指� �されますが、これはミクロ的なことですが、低下の一番大きい要因のではないかと思っています。

2012年5月24日

学生指導を語るほど学生指導をしていないのですが、ひとつだけ決めていることがあって、それは学生さんの研究テーマと自分の研究のテーマは合致させないということ。というのはコードはもちろん、アーキテクチャでも、指導教員のコードやアーキテクチャに不備があっても、学生さんは、どうして「このコードにしたのですか?」、「どうして、このアーキテクチャにしたのですか?」は訊ねられても、「このコードはダメ」、「このアーキテクチャはおかしい」とは言いにくいから。もし指導教員のアーキテクチャやコードに問題があると、学生さんも巻き込むから。それだけは避けたいから。

ソフトウェア系の研究室は、指導教員がアーキテクチャを設計したり、プログラムを書いたりすることも多いのですが、でも指導教員と学生さんの共同プロジェクトでうまくいった例をあまり見ないのですよね。よくあるケースとしては予算プロジェクトの関係で、指導教員が提示したアーキテクチャを学生さんが作っているような場合、上述のような状態になっていることが多いですね。もちろんそれ以外のケースもあるわけですが。

それともう一点を気をつけている点をあげると、学生さんには研究テーマを決めるときに、そのテーマをやめる条件も決めてもらっています。企業に就職するケースでは、学生時代の研究を企業で続けられることは少ないので心配なのですが、アカデミアに就職すると博士論文の研究テーマを引きずる人がいるので。実際、失敗する研究者をみていると、昔の研究テーマをずるずると続けて、時代から取り残されるケースが多いですから。それに同様に取り残される研究者は何人かは残りますから、本人はまわりもやっているからと思って、取り残されていることに気がづかない。逆に能力のある研究者だと、数年後、世の中で流行る研究テーマを予測できるのですが、実際に世の中で流行ったからといって、その研究テーマを続けるか� ��別問題。むしろ世の中で流行ったのなら、企業に任せればよく、アカデミアの研究者はさっさと次のテーマにいった方がいい。

当方自身はというと、新しい研究テーマをはじめるときは、そのテーマをやめる条件項目を作って、それをメモしてあります。その条件に少しでも抵触したら、そのテーマから撤収。各研究テーマの撤収条件は、○○技術で他の研究者に先に行かれたら、××技術が商業化されたらなど。もちろん、先のことはわからないのですが、概して初期の方が冷静に分析できるいるから、昔の自分を信用した方がいい結果を生むみたい。ちなみに当方の場合、各研究テーマでひとつだけ共通撤収条件があって、それは5年間以上は続けないこと。もちろん研究と時間は独立ですが、一方で一人の研究者が研究できる時間は有限ですから、やっぱり時間的制限は必要だと思います。

あとは研究テーマをはじめるときは、その研究テーマの仮説を厳密に定義しておくことでしょうか。研究テーマは失敗することがあるわけで、重要なことは失敗を早めに気づいて方向転換すること。仮説に応じて研究内容を決めているのに、仮説をあいまいに定義しておくと、まわりの状況が変わると、その状況変化に仮説をあわせてしまう。その結果、仮説と研究内容が乖離して、なんのための研究なのかがわからなくなる。だから仮説はなるべく厳密に定義をして、仮説の不備がすぐに気づくようにしておくことでしょうかね。当たり前ですが、仮説を変えるときは研究内容も変わることになりますね。柔軟性を大切だけど、変えるときは変える対象に依存する部分も変えないとダメですからね。

2012年5月23日

取材×3件と来客4組。というわけで時間が細切れ状態でしたが、懸案の書類が進んだのでよしとしましょう。

2012年5月22日

Hadoopとバッチ処理の親和性が話題になりますが、単にHadoopの実行粒度がバッチ向きとかいうこともありますが、個人的には、いまのコンピュータの生い立ちに起因すると思っています。バッチ処理というとメインフレーム、メインフレームというとIBMなのですが、そのIBMの前身は、アメリカ合衆国国勢調査局の技術職員だったハーマン・ホレリスが発明したパンチカードマシンを製造販売するタビュレーティング・マシンという会社。ホレリスは国勢調査局時代(1880年)、国勢調査の集計を手作業で実施しており、10年ほどかかる膨大な作業だったそうです。その後、彼はMITで機械工学科で学んでいるときに、その国勢調査の集計を高速化する方法として、パンチカードマシンを発明しました。それを米国勢調査局を採用して、1890年の国勢� ��査の集計は2年間とかからずに終わったそうです。

パンチカードマシンによる国勢調査では、氏名、年齢、住居種別、人種、肌色、性別などの情報がコード化されてパンチカードに格納されており、それぞれの項目毎にソートされて、それぞれを集計していきました。さてHadoop、正しくいうとそのHadoopの元となったMapReduceによる集計ですが、データはキーと値の組で扱われますが、キー毎にまとめて、それぞれを集計していきます。つまりやっていることはほとんど同じなのです。パンチカードマシンによる国勢調査は保健管理や社員管理に使われることになりました。そしてパンチカードマシンは電子化されて、その後のメインフレームになり、いまのコンピュータにつながっていきます。

何をいいたいのかというと、Hadoopによる集計処理というのは、バッチ処理の原型に近いわけで、Hadoopがバッチ処理の置き換えができるのは当然だといえます。それから米国の国勢調査は近代の国勢調査のさきがけでしたして、おそらく人類史上の最初のビッグデータだったと思われます。なお、ある講演でホレリスのパンチカードマシンを例にMapReduceの説明したことがありますが、見事にすべりました。というのはホレリスの名前はもちろん、パンチカードマシンを見たことのない方がほとんどでしたので。

それから本「IDの秘密」には「国勢調査、ID、そしてビッグデータ」という幻の章があったのですが、これはホレリスとパンチカードマシンがマイナーなことに気づいたことが大きいのですが、タビュレーティング・マシン社のその後の会社の方に書いていいか打診したら、強く拒否されたこと(拒否理由は話せないとのことでしたが、もしかするとナチスがパンチカードマシンを使っていたという噂に関係があるのかなぁ)、ページ数の問題から削除となりました。

2012年5月21日

出張疲れが残っていますが、午前中は慶大の大学院の授業。先週は授業前に雑談を話したのですが、クレームを付けられる。ということで授業の本筋だけを話す。授業で話す内容や技術が社会でどのように使われているのか、この授業は計算モデルなのですが、ソフトウェア開発やSIなどで使われることが多いので、企業におけるソフトウェア開発が最近どのような状況で、その中で計算モデルがどのように使われているかは話しておいた方がいいと思って話したのですが、この大学の学生さんは本筋以外のことは望まないようですし、特に実学的な話題は一切不要とのこと。それに情報系が専門でなくても、SI屋さんに就職する方の比率は結構高いはずで、計算モデルの授業でなくても関係あるはずだけどね。このあたりは大学のカラー というか、生徒気質が出ますね。なかなか興味深い。ただ、授業の本筋だけならば書物を読めばいいわけで、授業に出なくてもいいのにね。

2012年5月20日

帰国。成田空港は入国審査場はガラガラなのに、手荷物受取状は劇混み。どうなっているのやら。

2012年5月19日

さて帰国のために移動。まずはマドリッド空港からルフトハンザのミュンヘン行き。それから全日空の成田行き。往路は運良くプレミアムエコノミーにアップグレードしてくれましたが、復路はエコノミー。問題はミュンヘン便は古い機体だからエコノミー席にシート電源がないこと。いろいろお仕事しないといけないので、辛いところ。それにしてもマドリッドは35度の日があったり、今日は昼だというのに15度。すごい温度差でした。

バリトン歌手のDietrich Fischer-Dieskau氏が18日に亡くなったそうですね。実は学会会場の行き帰りに訊いていたのは彼が歌うSchubertの冬の旅でした。Fischer-Dieskau氏は最も好きな男性歌手でしたし、NHK教育テレビで「シューベルト歌う」という番組で講師役を勤めたときは、シューベルトを歌うわけでもないの毎週欠かさずにみていたり。冥福を祈りたいです。

2012年5月18日

国際会議の2日目。なんというか数式がお好きなコミュニティの会議ですね。いきなり数式の説明から始まって、そのまま数式でおわるという状態。それでもいいのですが、ちょっと分野が違うと質疑も、セッション後の議論も絡みようがない。さて会議は昼過ぎにおわって、30分弱でいけるセゴビアにいってみる。

ところで、一昨日の続きですが、スペインから学ぶべきことは多い。例えばスペインは全量買い取り制度(FIT)による太陽光発電の拡大したけど、結局、財政負担急増による取止めで失速。日本も全量買い取り制度が始まりますが、同じ展開になりそう。所詮、補助金に頼った事業は長続きしないし、エコポイント制度に代表されるように補助金が終わったときの反動が大きいですから(世界的にみて、FITを導入して、うまくいった国はそもそもあったのかという感じ。もちろん大失敗した国はいっぱい)。

先日のスペインの地方分権にしても、重複が多くなって無駄が増える、つまり財政負担は増える。それに法人税などにより、自治体間の財源の格差は広がりますし、それを調整する制度を作ったり、既存の地方交付金と変わらない。それとスペインでは地方分権に踏み出す以前から、自治体間で債務状況は違ったそうで、返済どころか、利子負担で財政破綻するリスクもあります。

そして何よりもスペインの地方分権で学ぶことは、一度、地方分権に舵を切ったら、どんな問題が起きても、元に戻すことは非常に難しいということ。実際、スペイン政府は1970年代後半の地方自治制度によって、地方に移譲した権限を中央政府に戻すことを提案していますが、中央政府のお膝元であるマドリッド州知事まで反対しているそうです。中央政府の権限が、役所だけでなく、多方面で既得権益化しているのと同じで、その権限を地方に委譲すれば、地方自治体と地元の一部で既得権益化がおきてくるわけで、元に戻すことは不可能に近いはず。仮に地方分権を進めるにしても、スペインの事例を学んで、失敗しても後戻りはできないことを肝に銘じてほしいところ。

2012年5月17日

国際会議(EAIS'2012)で発表。開催場所の大学の関係者に頼まれたので投稿したけど、学習系、それもその定式化がお好きなコミュニティ。他の発表は数式ばかりで、何に使うのかを説明しない発表が多い。それと関係者が国際会議慣れしていないというか、会議委員長の挨拶から外していて、なんというか。夜はバンケットだったのですが、なんと会場はリアルマドリードのホームスタジアム内のレストラン。

2012年5月16日

今日は代休日ということで、トレドに行ってみる。最後にマドリッドに来てから、1ヶ月半弱だし、どうせならばちょっと違うところへ。トレドはマドリッドからは列車で30分弱の街ですが、トレドはマドリッドに遷都するまではスペインの首都だった古都。中世で時間が止まったような街でした。

スペインの財政危機が懸念されています。前回の出張を含めると10人以上のスペイン人に財政危機問題を訊くのですが、そこで見えてきたのは地方分権の失敗でした。ご存じのようにスペインは大きく分けて、4つのブロックから分かれており、バスクなどは独立運動が起きていますし、バレンシアでは例えばバルセロナで開催された国際会議ではローカル組織委員会が開催地名から、スペインと書かずに、バレンシアと表記したりで、地域毎に向いている方向がばらばら。ということもあって、(スペイン人曰く)1978年の地方自治制度で改革で、スペインは17州それぞれに小国家群となったそうです。例えば首都があるマドリッド周辺は、マドリッド自治州という名称であり、ある種の小国家状態。

地方分権を進めたわけですが、財政効率が悪化した。つまり同じような組織を各州が作るから重複が多く、無駄が多い。日本でも政府集中よりも地方分権がいいという流れですが、地方分権は無駄が多くなります。またどうしても部分最適化されてしまって、それが全体最適化につながらず、国力を落とすことも多い。

さてスペインの話を戻すと、数人のスペイン人が共通して話すのは、スペインの財政危機を解消する最重要条件のひとつは、各州から権限を取り上げることだそうです。もちろん、これだけでは解決できるとは限らないのですが、この問題を残していると財政危機リスクはなくならない。ただ、再集権化はバスクなどの独立志向の強い地域の独立運動を引き起こし、内戦化しかねないというとのこと。実際、1930年代のスペイン内戦という不幸な歴史がある国なので、冗談ではなさそう。

2012年5月15日

全日空でミュンヘン、それからルフトハンザでマドリッド。ミュンヘン便はプレミアムエコノミーにアップグレードしてもらえた。全日空は早割などの安価チケットの乗客は滅多にアップグレードしてくれないので助かります。早割でアップグレードしてもらったのは昨年の8月以来かも。全日空は昨年、プレミアムエコノミーにアップグレードしてもらったけど、結局、機体変更で強制ダウングレードされたことまであったり(しかも説明も一切なかったし)。

2012年5月14日

慶大の大学院の授業。毎年訊かれるのは何枚の課題レポートを書けば単位をもらえるのかという質問。課題を出す前から訊かれてもという気もしますが、もちろん悪意はないのでしょうが、必要以上のことはしたくないというの打算が見え隠れするんですよね。買い物をするのではないのですから、一番安い値段で買いたいと思われても困るし、または就職活動でいうならば自分の価値を一番高く買ってくれるところを探すにしても、まずは自分の価値を高めることの方が先だと思ったり。

夜は勤務先の大学院。さすがにレポート枚数的な質問はないのですが、講義が英語なので10倍ぐらい疲れるんですよね。

2012年5月13日

職場の同僚というか、学生時代の同じ研究室の出身者というか、至近の住人というか、ともかく大切な方の結婚式&披露宴。それにしても縁がありますね。だいたい同じ研究室の出身者で同じ職場は彼しかいなかったのに、期せずして住んでいるところも至近となったわけで。いずれにしても、本当におめでとう。そしてとってもいい結婚式&披露宴でした。ありがとう。それからお土産のチーズケーキおいしかったです。

2012年5月12日

今日は休日出勤はなし。いろいろぐったり。でもいろいろ書類作り。ここ数年は、いかに時間を作るのかが課題になってきている感じですね。ただ、時間を作るためには最終的には何かを切らないとダメなわけで、何を切るかも悩ましい。それと研究者は考えることが仕事ですから、集中して考える時間を作ることが重要課題。それと専門となるコンピュータサイエンスの現状は、現実世界の課題を解決することに注力するしかなく、実アプリケーションの要求を知っている研究者が有利というか、本質的に新しい研究課題が減った現状では、実システムの課題を知って、それを解くことが重要となるわけで、アカデミアの研究者でも実アプリケーションの要求を知れる立場の研究者とそうでないはない研究者の差は埋めようないほど広� ��っていいるのが現状で、いかに実アプリケーションの要求を知るための手段を作るかが重要。逆に言うと実アプリケーションの要求を知り得ないと確実に先がない状態。ただ、当の本人はそれに気づけているかは別問題なわけですが。

2012年5月11日

ビックカメラがコジマを買収。びっくり。それでも売上規模ではヤマダの半分。それもびっくり。でも一番、びっくりしたのは家電量販店が家電量販店を買収したことだったり。駅前や郊外に大きな店を構えて集客するより、通販に力を入れるべきだと思うし、通販業者または通販に強い業者を買収すればいいのにと、素人的には思うのですがね。

2012年5月10日

先月、不愉快な思いをした某大手SI事業者さん主催のセミナーですが、なんと再び講演を頼まれる。中に入った業者さんの問題とはいえ、もうなんというか、さすがにびっくり。こちらも不作法を水に流して、大人の対応したのですから、最低限の大人の対応はしてほしいと思ったり。

2012年5月9日

RFIDの講演。講演資料の提出締め切りが4月上旬。どんな資料を作ったのか、すっかり忘れており、あわてて復習。PowerPointの次のスライドを表示する機能があったから助かったのですがね。ちなみに会場はビッグサイトでは一番大きい会議会場、1000人収容だそうです。実際の客入りは600〜700人ぐらいの客入りでしょうか。

当方のあとは商社の方がアパレルにおけるRFIDタグ活用事例を話されたのですが、アパレルとRFIDタグは、5年ぐらい前に大型倒産した某ITベンダーの一件があり(ここ10年間でIT業界の倒産では負債が一番大きい?)、あまり触れたくない組み合わせ。もちろん、その商社は無関係なのですが、あの倒産にはいろいろ噂もあり、RFID業界及びIT業界関係者だったら冷や汗ものだったはず。主催社は知らずに企画したのでしょうが、もし知っててやったならば、いわゆる炎上マーケティングよりも怖いです。

2012年5月8日

昼間はひたすら雑用。夜は某セミナー。Facebookの話、なんというか、残念というか、さすがに途中で帰ろうかと思いました。ただ、同社のアーキテクチャは知っておいた方がいいので、Facebookのアーキテクチャー図を描いておきます(研究室向けには説明していたりするのです)。あくまでも当方が想像したアーキテクチャなので、正しいかはまったくの謎。


同性愛に関する聖書の話のどの経典

当方が勝手に説明すると、フロントエンドのHTTPは超多数ユーザのWebブラウザと、Ajaxを含めてHTTPで通信をしています。そのAjax処理をしているのがScribeというフレームワーク。そしてScribeはその通信をHDFS上に作られたログに書き込んでいきます。ただし、流速を下げるためにWrite Ahead Logを使って、書き込みは速くできるようにする一方で、読み出しはゆっくりできるようにしています。そのログを呼び出しているのがPTailと呼ばれる部分。名前の通り、Tailからログを読んでいるらしい。そして複数のPTailからのデータを(属性ごとになどに)集約しているのがPumaという部分。このPumaはHBaseに結果を書き込んでいる。Pumaには属性ごとにハッシュ値を用意して、同じ属性のデータはまとめている。簡単に言うと、流速が変わる多数の細い川の流れを、ログやファイルシステムを組み合わせて、データ分析処理部分(Hadoop)がついていけるところまで、流れを太くすることで遅くするためのアーキテクチャということですね。

でも重要なここまでではなく、ここから。このFacebookアーキテクチャから何がわかるかです。このアーキテクチャの問題点はフロントエンドに流れ込むデータが多くなると、バックエンドのバッチ処理に流れ込むデータも速くなってしまうこと。この心配がないのは、ログやファイルでバッファリングでできていることもありますが、おそらく、Facebookではユーザ数が世界中にいて平滑化されていて、増加傾向になるしても、長時間にわたって増大することが少ないのでしょう。もうひとつはなぜストレージベースよりもストリーム的な処理に拘っているのか。これは個人的な予想ですが、ストレージを使いたくない、つまりデータを保存したくないということでしょう。このサービスもプライバシー問題が懸念されていますが、ひとつ打 開策はユーザ属性などの基本データ以外は溜めずに捨てることを狙っているのではないでしょうか。実際、Pumaという部分からHBaseを介さずに直接データ分析を狙っているようです。もちろん、データ分析ではストアベースの方が性能がいいのですが、ストリーム系のデータ分析は2002,3年ぐらいから通信トラフィック分析向けにいろいろ提案されはじめており、そうした手法でも十分と踏んでいるのではないでしょうか。それとストリーム系データ処理でもPumaという部分以外は、王道的なストリーム処理を使っていません。何を言いたいのかというと、ストリームデータ分析でも専用エンジンはいらないということです(ストリームデータの研究している方々の多くはFacebookのアーキテクチャをほとんど知らないのですよね)。

それから、ほとんどのシステムには無縁なアーキテクチャだと思われるかもしれませんが、データ流速を変えて、バッチ処理を含めて、大量データをロングタームで処理をするという場合には参考になるはず。それから、いまあるアーキテクチャを語るだけではだめで、次を予想できる、または改良案が提案できるぐらいでないと、この世界では生きていけないです。

2012年5月7日

慶大の大学院授業。夜は勤務先の大学院授業。授業をひとつの曜日にまとめると楽なのですが、その日は辛い。仕事なので、愚痴っている場合ではないのですが。悩ましいのは海外出張。重ならないようにするのですが、前期中はマドリッド、アントワープ、シチリア、シアトル、それぞれの出張予定。というわけで前期中は一回は休講になりそう。

2012年5月6日

休日出勤。

本「IDの秘密」はちょうど一ヶ月前に発売になったのですが、多くの方から書評をいただき感謝です。でも販売数は知らされていなかったり(業務執筆で印税はもらえないから、販売数は関係ない)。

IDの本を書いた理由ですが、IDに関する本がなかったから。情報システムはもちろん、社会システムそのものでもIDは基盤だし、そのIDの設計によっては便利なシステムも不便になるし、年金問題のように社会そのものの混乱の原因になります。つまりIDは現代社会の基盤なのですが、そのIDに関する本がなぜかない。もちろん、分散システムの研究者である当方がIDの本を書く必要もないのですが、分散システムでもミドルウェアを作ったりしたら、オブジェクトやタスクにIDを付けるし、そのIDの設計はシステムの根幹。いちからミドルウェアを作るような研究しているとID設計にはいつも悩まされているのです。

話をもどすとIDは情報システムの基礎。流行のビッグデータにしても、ID設計は非常にたいせつ。ビッグデータの分析で、対象につけるIDの設計を間違えて、区別すべき相違な対象に同じIDをつけたら区別できなくなります。逆に区別しなくていい対象に相違なIDを割りあてるとデータ量が増えるだけでなく、あとで名寄せで苦労することになります。ビッグデータによる分析で一番キーになる技術は問われたら、IDだと思います。これは本を書いたからというわけでもなく、ID設計に失敗したら分析できるものも分析できなるし、分析処理も無駄に増えることになるからです。もちろん分散システム技術やデータ構造設計も重要なのですが、それはすべて、ID設計がきちんとできてからの問題。

例えば小売りにおける顧客行動分析では、顧客にどのようにIDを割りあてるのかを考えないといけません。顧客IDは内部だけで使うのか否かで、設計が違ってくるし、ユーザサービスが絡むと認証も必要。

また、商品にどのようにIDを割りあてるのかも考えないといけません。JANコードを商品のIDの代わりに使うことは広く行われていますが、JANコードは流通向けのIDなので顧客行動分析に向くとは限らない(正しくはレジの行列解消が目的なのですが、その経緯は書籍を見てください)。例えば店舗内に同一アイテムを複数の売り場においた場合にレジが同じならばどの売り場の商品なのかは区別できません。それにJANコードでは商品のパッケージだけがかわったときはかわりませんから、商品切り替え時の売上げ変化はみれない。

プライバシー問題でも、IDの利用を間違えると置きやすい。というかほぼ確実に起きる。このため頑丈な情報システムを作る前に、IDの運用方法を考えてほしいし、さらにその前にIDの設計をよく考えてほしいのです。いまの時代は情報の漏洩は、担当者のクビどころか、企業の存続に関わる経営リスクですから。

ところで、「IDの秘密」をお読み頂いた方は、Amazonの書評やTwitterなので、感想などを書き添えて頂けるとうれしかったりします。よろしくお願いいたします。前述のように発行部数を知れる立場ではないので、わかるのは皆さんの書評ぐらいなのです。

2012年5月5日

原発の全停止になるそうですね。原発の是非は別にして、原子力というのは科学技術のシンボル的な存在だったわけで、それがネガティブなシンボルになっている現状は考え深いものがあります。個人的には原発事故以前に、科学技術はすでにネガティブな存在になっていたように思います。最近の環境指向を見ていても、科学技術が目指していた物質文明的な物語はすでに否定されていたように思いますし、むしろ原発事故が後押ししただけなのでしょう。

当方の世代は小松崎茂氏などが描く未来予想図を見て育った世代、さすがに21世紀には車が空を飛び、労働はロボットが肩代わりしてくれるのような脳天気なことは夢見ていませんでしたが、科学技術が豊かな生活を実現してくれると信じていました。ただ、いまの当方は科学技術は豊かな生活を実現してくれるとは全面的に思っていないし、専門のITにしても人々や企業の生産性を上げてくれたかもしれませんが、個人を忙しくしているという点は残念だけ否定できません。もちろん、豊かな生活とは何かを定義をしないといけないわけですが、少なくても物質的な豊かさを追い求めるのは違うような気がします。

一昨年から昨年にかけて、与党の事業仕分けで科学技術系の予算が大幅削減されました。まわりの研究者でも、憤っている方々が多かったわけですが、科学技術が予算削減対象、いいかえれば人々の関心事ではなくなっている現実を考えるべきだと思います。

先日、コンピュータサイエンスは基本戦略はシンプルで「潤沢にあるリソースを使って、枯渇しているリソースを補う」と書きましたが、枯渇しているリソースは物質ではなく、個人の時間なのでしょうね。少なくても生産性をあげることと、個人の自由時間を増やしてくれることは根本的に違うわけで、前者から後者に切り替えられるかは重要かもしれません。

2012年5月4日

今日も休日出勤。先週の問題設定(課題設定)が重要の話ですが、現実には問題設定ができる人は少ないのですよね。腕のいいプログラマーでも、プログラムする対象を与えられないと途方に暮れる方は多いですから。OSSプロジェクトでも、多数で大きなソフトウェアを作ることは高く評価しますが、個人的に興味があるのは、その作る対象を考え人の方。その意味では○○互換のOSSって、研究者的にはまったく関心がないのですよね。その場合、むしろ関心事はオリジナルの○○の方になりますから。その意味では例えばHadoopに興味ない。興味があるのはGoogleのMapReduceの方。別にOSSを否定するつもりはないのですが、どうせ新しいソフトウェアを作るならば、いままでにないソフトウェア、もっと正しくいうと、まだ解決されていない問� �を解決するソフトウェアを作ってほしいのですよね。

2012年5月3日

休日出勤。仕事柄、研究テーマ設定の相談を受けるわけですが、コンピュータサイエンスにおける基本戦略はシンプルで「潤沢にあるリソースを使って、枯渇しているリソースを補う」ということ。通信帯域が足りなくて、プロセッサの性能が上がって、計算能力が余っているのであればデータを圧縮してから通信をする方法が効率的になります。ただ、そのリソースの対象が計算機や通信以外にも広がりつつあるところが悩ましい。

ちなみにいま一番枯渇しているのはリソースは「人間の時間」だと思います。例えばWeb検索にしても、潤沢なサーバを使うことで、人間が(資料を)さがしものをする時間を減らしてくれるから便利なのですよね。でも他の潤沢なリソースで「人間の時間」というリソースを節約するといっても、時間あたりの生産性の向上と、暇な時間を作るとは違います。ソーシャル化は人間といっても、組織ではなく個人に焦点をしぼっているように、今後は人間の時間でも、個人の時間の節約がターゲットになっていくのでしょう。

2012年5月2日

ひたすらお仕事。勤務先の近所になる国立近代美術館でJackson Pollock展を見に行く。好きなアーティストではないのですが、まとまってみる機会も少ないので見てみる。イランの故パーレビ国王が所蔵していたというポロックの「ポーリング」や「ドリッピング」手法の末期の作品(「インディアンレッドの地の壁画」)がイラン政府の協力で貸し出されたというのがウリなのですが、確かにその作品は渾身といえるものでした。個人的には「ポーリング」や「ドリッピング」手法は芸術というよりも、ただのカオスと思ってしまう方なのですが、それ以前に作者ポロック本人が描いている様子が頭に浮かんでしまうのです。よくいえば作者の身体性を表現した作品となるのでしょうが、違和感があるのですよね。ある種のアクションアートといえるかもしれませんが、イヴ・クラインのように制作過程 を含めてアート化しているわけではない。ポロックの作品に芸術性があるとしたら(あるんでしょうけど)、それはすごく静的なものだと思うのです(あのカオスの中の静寂性は否定しない)。でも制作過程という動的な部分が見えてしまって、違和感を感じるのですよね。

2012年5月1日

火曜日ですが、非常勤先の大学では月曜日の時間割ということで大学院授業。確かに日数的には合理的な判断ですがね。

それにしてもこの授業はむずかしい。履修者の2/3が非情報系学科の出身というのは例年通りなのですが、採点すると毎年、非情報系学科の出身の方が成績がいい。だからといって非情報系学科の出身の方々は情報系の基礎を学んでいないので、基礎から丁寧にやらないといけない。ただ、非常勤先のことだからどうでもいいのですが、情報系学科の出身の方が毎年、出来が悪いというのは端から見ていても不思議なのですがね。おそらく情報系に関する知識は情報系学科出身者が上まわるのでしょうが、レポートなどになると知識は調べればわかることから、論理的思考の差というか、学部教育におけるトレーニングの差が出るのでしょうかね。

それから授業後に非常勤先の先生と話題になったのですが、学部だけでなく、大学院でも授業中に教室を出たり入ったりする学生が多いこと。当方の授業でも授業一回につき延べ数で2、3人おられますが、その非常勤先の大学院授業では、いわゆる学級崩壊状態の授業も結構あるそうで、当方の授業は少ない方らしい。他の大学では学部では見聞きしますが、大学院ではなかなか珍しい。ただ、これは非常勤先の教育方針だし、企業の就職担当者でもないので、当方は関知するつもりはない。

それと毎年、閉口するのはレポートでWebの丸写しが多いのですが、それ以上に驚くのは丸写しでも、参照先を明記しないレポートが極めて多いこと。学部などでは他者の文献を参考にするときはそれを明記するということを教育していないようで、毎年、複数の生徒さんから(丸写しでも)レポートを出したのだから単位を出せという論法でクレームが来ます。酷い場合はDを付けるのですが、これも非常勤先の教育方針だから悩ましい。

2012年4月30日

東京都写真美術館でRobert Doisneau展。Doisneauは一番好きな写真家の一人。自分の写真も彼の影響をすごく受けていると思います。そのため彼の作品展は何回もみているのですが、今回はカラー写真などいままで見たこともない作品も多く、楽しめました。

2012年4月29日

私事で三重県。

昨日の続き。研究は問題を解いていくわけですが、解き方に関心がいきがちですが、どんなにいい解法でも問題が間違っていたら意味がないのと同じで、まずは問題設定が重要。

問題設定で気をつけないといけないのは、多くの研究者が扱っている問題は解くべき問題だと思ってしまうこと。論文などで同じ問題を解いている研究を列挙して、自分の研究は既存研究よりも(ちょっと)優れていると主張する論文があります。同じ問題を扱っている研究者が多いことと、その問題が本当に解くべき問題なのかは別。分野全体で問題設定を間違えている可能性もあります。

例えばコンピュータサイエンスではセンサーネットワークという研究分野があります。センサーネットワークの国際会議をみていると、多くの論文はセンサーとは無関係に、無線によるネットワークルーティングの論文ばかり、それもシミュレーションベースの研究がほとんど。当該分野のトップ国際会議にネットワークルーティングの論文が数多くでていたのですが、それらの論文はどれもシミュレーションだし、しかもその半数が電波は球状に伝搬することを仮定している論文でした。現実無視な仮定だし、そんな論文が採録するのはおかしいのですが、査読している研究者も同じ仮定で研究しているので、それがおかしいとは思わなかったのでしょうね。

センサーネットワークに限らず、研究的には盛り上がっていても、実用化が進んでいない技術や分野というのは、現実の要求がわからないので、研究者が、研究に都合のいいように問題設定しまうことが多いんですよね。現実の要求を見ないで研究する方を否定しないけど、どうせ研究するならば解くべき問題を解いた方がいいと思うんですよね。

博士課程の学生さんをみていても、3年間で博士が取得できる方と博士取得に時間がかかる方を比べると、研究遂行能力は大差なくても、問題設定能力の差が出ているケースをよくみかけます。概して3年間で博士を取得する学生さんというのは、まずは博士論文にふさわしい問題設定をしていますが、博士論文としては大きすぎる問題設定でも、その博士論文に至るまでの過程に、経過点として中間的な問題設定をしていて、博士取得に必要な論文数を稼いでいることが多い。逆に博士取得に手間取っている学生さんは問題設定に失敗しているケースが多く、努力していも論文は通らない、精神的に追い詰められる、周りが見えなくなり問題設定の失敗に気が付かないという悪循環。

もちろん、学生本人の問題ですが、不幸なのは問題設定が上手ではない指導教員にもった学生さんは、仮に本人が問題設定能力を持っていても、指導教員が間違った設定をさせてしまうことがあること。残念だけどほぼ確実に学生さんは潰れる。でも、このケースは多いような気がします。コンピュータサイエンスのように技術の移り変わりが速い分野では指導教員は、博士課程の学生さんに対して問題の解法を指導できるとは限らない。できるのは問題設定の修正ぐらい。だから間違った問題設定を指導するぐらいならば何も言わない方がいいのでしょうね。

昔、フランス人の研究者にいわれたのですが、学部は専門の基礎を学ぶ場、修士は問題を解く方法を身につける場、博士課程は問題を見つける能力を身につける場。そのとおりならば問題設定能力が身についていないというのは本来は博士号を出すべきでないかもしれません。

2012年4月28日

夜になってから休日出勤。無事にカメラレディ論文を送付。

研究は課題があって、それを解いていくことの繰り返しなのですが、研究者ってしばしば解くことだけに没頭するんですよね。自然科学や数学などは解くべき問題が知られていることも多く、それを解いていくことになるのでしょうが、コンピュータサインスの場合、研究対象のコンピュータがそもそも手段にすぎないわけで、問題が自明とは限らない。

コンピュータサイエンスではトップ国際会議が重視されることもあって、そのトップ国際会議にどうすれば論文が通るのかが話題になりますが、重要なのは問題設定(課題設定)であって、その問題を解く方法とは限らない。研究的な中身があるかは別にして、トップ国際会議に通る論文を手っ取り早く書くには、多くの人が気づいていないけど、もしかすると重要かもと思わせる問題を見つける。そしてその問題を解いておく。でもその解く方法はどうでもいい、むしろ見つけた問題が重要で、それを解くことは難しいことを強調すればいい。残念ながらこうした論文が中身がないのだけど、トップ国際会議はは通ってしまうんですよね(もちろん、中身がないから参照されないけど)。

こう書くとひどいように見えますが、ビジネスとしてみたら正しい。仮にネットワークサービスのベンチャーを興したとして、重要となるなのは提供するサービスであって、そのサービスを実現する方法ではありません。ネットワークサービスでも裏は人間が処理していても構わない。そしてベンチャーキャピタルの立場になってみれば、投資先のベンチャーがサービスの提供方法に拘るよりも、むしろ提供方法は状況に応じて最適な方法を選んでもらった方がリスクが少ない。

もちろん学術研究では問題を解く方法が重要なのですが、そもそも問題設定を間違えていたら、どんなにすばらしい解法でも意味がない。研究者はしばしば自分の得意な方法や技術をもつけど、それを活かす問題を見つけていてはダメで、まずは自分が解くべき問題を見つけることが最初にあるべきなのですよね。

なんで、こんな当たり前の話をしているかというと、先日、数回しか話ことのない研究者の方とあったときに、○○国際会議に通った××という論文のクオリティが低いと憤っておられたのですが、後日、その論文を拝読したところ、確かに研究方法や評価はお世辞でも立派な研究とはいえませんが、巧みな問題設定をしている論文でした。残念だけど、それに気がつかない方って、トップ国際会議に論文を通せる可能性はまずないんですよね。個人的にはトップ国際会議を通すことが研究の目的とは思わないし、そうであるべきではないと思います。ただ、トップ国際会議に論文を通せたという実績は、問題設定能力を示すうえでは重要な指標だったりします。

2012年4月27日

岩手県から戻って、オフィスで仕事。

2012年4月26日

盛岡市の林業会社を訪問、それから岩手県庁に訪問して、そのまま県庁の方に陸前高田の森林まで案内していただく。その森林に行く途中で、陸前高田によっていただく。陸前高田は津波に街全体が流されてしまったわけですが、街は大きな鉄筋コンクリートの建物以外は残っていない。ただ、残った建物は手付かず。復興とかいう段階ではなく、被災直後から変わっていないと思われる場所も多い。在京者としては何が出来るのですかね。

2012年4月25日

2月に実施させていただいた実証実験の報告と御礼のために、協力していただいた企業の方と、釜石の森林組合。森林組合のご厚意で、間伐のための伐採を拝見、それから森林組合の4トントラックに乗せてもらって遠野のNPO団体様を訪問。釜石は津波被害が大きかったわけですが、市内の多くの建物が流され、鉄筋コンクリートの建物は一部残っていますが、全壊状態で危険で立入できないし、取り壊すための費用以前に権利者関係の整理が必要で、このままでは何年も全壊建物が残ることになりそう。三陸鉄道は流されたままですが、JR釜石線などは復活しています。今後は寄付や義援金は減ってきますから、経済的な自立が必須で、そのまためには、観光客としてでもいいので、釜石にいって現地にお金を落とすことが重要なのでしょ う。

2012年4月24日

午前中は早大理工、午後は勤務先で打ち合わせ×3本。

2012年4月23日

慶大大学院の授業、それから勤務先の大学院の授業。くたくた。小中学校の先生からみれば、一日二コマ、正しくは一週間で二コマで、くたびれるな、といわれそうですがね。

2012年4月22日

休日出勤。

2012年4月21日

このところ込み入った話題が続いていますが、一昨日の非同期と並列性(以降、並行性でもいい)について補足。いまのマルチスレッドプログラミングでは、明示的にスレッドを生成して、並列処理を実現する方法が主流。例えばプログラミング言語の構文を拡張して、別スレッド実行する構文ブロックを作ったり、スレッドを表すオブジェクトを導入して、そのオブジェクトに処理を依頼する方法などがあります。

こうした方法自体が悪いわけではないのですが、並列化においてスレッドの生成は絶対必要というわけではない。例えば先述の非同期一方向通信を使えば、送信側はメッセージを送信後、そのまま次の処理を行えます。受信側は仮に止まっていても、メッセージを受信するとそのメッセージに対応した処理を始められます。つまり送信側と受信側はそれぞれの処理を同時に行える、つまりスレッドをわざわざ生成しなくても、並列化されていることになります。並列化してから処理をするのと、処理の過程に並列化されていくのかを比べたとき、並列化は目的ではなく、あくまでも処理の方法なのですから、後者の方が自然なはずです。

それではなぜ多くのプログラミング言語が明示的なスレッド生成を採用ているのでしょうか。それは非同期性による並列化はプログラミング言語を新規または大幅拡張を必要とすることもありますが、それ以上に開発者からみると非同期通信的なプリミティブの取り扱いが難しいからでしょう。また、非同期性による並列化は並列度の制御が難しいという問題もあります。その一方で並列性の難しい問題を逐次的な処理の中で解決を強いることになります。

2012年4月20日

「イノベーションのジレンマ」という有名な書籍がありますが、博士課程で研究するならば、連続的イノベーションよりも破壊的イノベーションを研究してほしいのですよね。だって連続的イノベーションだったら、企業の事業部でもできるのですから。もちろん、性能を5%上げることが本質的に難しい分野もあります。でもIT系の場合、ハードウェアの性能は徐々によくなりますから(これは究極的には半導体の販売量に依存するので、簡単ではないけど)、例えばソフトウェアの場合は何もしなくても性能はよくなっていく。だから破壊的イノベーションの可能性を常に見ていてほしいし、それを予測して、場合によってはそこに賭けてみてほしいし、そのイノベーションで世の中にどのような影響を与えるかを考えていてほしい。

それとITのように技術の移り変わりが激しい分野では、技術トレンドを予測することも博士持ちの重要な資質の一つのはず。もちろん将来技術が既存技術の延長戦、つまり連続的イノベーションになる可能性が高いにしても、全く違う技術に置き換わる可能性、つまり破壊的イノベーションがおきる可能性があるのならばその可能性が低くても、その破壊的イノベーションとその影響を予測できることは重要。その能力を博士課程で学ぶにしても、アンテナはいろいろ張っておいてほしいのですよね。

2012年4月19日

テレビ朝日の「やじうまテレビ」で、当方のインタビュー部分(思ったよりも長い)が放映された模様。というのは当の本人は見逃したのでした。午後は品川方面で講演。それからオフィスにもどってお仕事、お仕事。今週は完全に仕事量に処理量が追いついていない日々。

2012年4月18日

急遽、テレビ朝日の「やじうまテレビ」の撮影クルー&アナウンサーさんがこられて取材。撮影自体は2時間ほどで終了。明日、放映されるとか。

昨日の補足ですが、プログラミングにおける非同期で勘違いしている人が多いのですが、関数呼び出しのように、相手に呼び出しメッセージを送って、相手から結果メッセ−をもらうのは遠隔手続き呼び出し。逆に相手に呼び出しメッセージを送るだけは一方向通信。さらに一方向通信と遠隔手続き呼び出しには同期と非同期があります。一方向通信で送信側から受信側にメッセージを送ったときに、手紙のように受信側がその時点でメッセージを受け取られなくても、送信側の送信処理が完了するのが、非同期一方向通信。受信側がメッセージ受信になるまで送信側が次の処理ができなくなる(これをブロックされるという)のが、同期一方向通信。同期一方向は通信は並列システムではありえますが、分散システムでは見かけない。� ��隔手続き呼び出しでは、呼び出し側は呼び出された側が結果を返すまでは次の処理ができないというセマンティクスが多いのですが、問題はその帰ってくる結果。処理結果がかえってくるまで受信側が待たされる同期遠隔手続き呼び出しもありますが、呼び出された側がとりあえず何かを返す、例えば処理結果を格納する場所の情報を返して、そのまま処理を継続させる非同期遠隔手続き呼び出しがあります。非同期遠隔手続き呼び出しを実装した言語は少ないのですが、これが一番強力。というのは非同期遠隔手続き呼び出しは同期・非同期一方向通信、同期遠隔手続き呼び出しの代わりになるからです。他の手法は上記の4つのうち残りの方法を代わりになるわけではない(どうして代わりになる理由と代わりにならないかの理由が� �瞬間に想像つかない程度ならば、分散とか並列とかに手を出さない方がいい。本当に)。

2012年4月17日

一昨日の分散システムの非同期に関する続き。さてプログラミング的な立場でいうと非同期通信は扱いにい。通信が相手に届いたのか否かもわからないし、前に送ったメッセージがその後に送ったメッセージの順番通り、つまり送信順と受信順が一致する保証もない。だから様々状況を考えてプログラミングしないといけないし、当然例外処理も増えます。

ならば分散システムで同期的が扱えるかというとそれは難しいし、通信失敗は同期方式でもおきるし、せいぜい通信失敗を検知できる可能性があるぐらい(実際には通信失敗なのか、通信先のノードの問題化はわからない)。送信順と受信順の一致性も、通信に関わるノード数が3つ以上になったら保証できなくなります。突き放した書き方ですが、ここにあげた二つの事象がなぜ起きるのかという理由を一瞬で想像できない方は、悪いことをいわないので、分散システムには手を出さない方がいい。


私はバートミツバーに何を着るか

それともうひとつは分散システムが閉じた系か開いた系であるかという問題があります。単体コンピュータ、中身が並列コンピュータであっても、ひとつのコンピュータが開いた系になることはまずないのですが、分散システムではコンピュータは(動いたままでも)つながったり、外れたりしますから、システムを構成するコンピュータは不定。さて、閉じた系では分散システムを構成するコンピュータは決まっています。だから例えば定期的に他のコンピュータに「生きているか」を問い合わせるメッセージを送って、その返事が全員から来ていることを確認すれば、返事を送った時点、つまり返事メッセージの通信遅延分だけ過去においてはコンピュータは生きていることがわかります。でも開いた系の場合、分散システムを構成す� �コンピュータは不定。前述の全員が特定できません。他のコンピュータが動いているかはもちろん、他のコンピュータは誰なのかもわからない。この状況で同期的な世界を構築するのは困難。諦めるしかない。

また、開いた系のプログラミングで難しいのは、開いた系では分散システムを構成するコンピュータは変わりますから、プログラムが通信相手を見つけることと、通信相手がいなくなる可能性を考慮したプログラミングが必要なこと。前者は通信可能な相手を明示的に通知する仕掛けか、通信相手をさがす仕掛けが必要。でも(非)同期と関わるのは後者。仮に開いた系で同期的通信をしたら、相手の返答を待っているうちに、相手(または自分)が分散システムから外れているかもしれません。そうなったら永遠に相手からの返事を待つことになります。そうなるとプログラミング的にも最初から非同期通信にしておいた方がいいということになります。

2012年4月16日

午前中の慶大の授業「計算モデル特論」は履修者数が70人超えだそうで、ありがたいのですが、大学院授業としては多すぎというべきか。授業内容を考えないといけませんね。夜の勤務先の大学院授業「Distributed Systems」は履修者が4人のようですが、こちらは英語授業なので10倍ぐらい疲れます。ところでいま分散システムの授業は内容設定が難しいのですよね。時流からいえばクラウドコンピューティングに特化すべきですが、ただ誰もがクラウドコンピューティングのインフラを作るわけではない。大学院ですから、専門性を考慮した内容にしますが、どこまで話すか。

2012年4月15日

昨夜、Twitterで分散システムの非同期性が論議になったので、その絡みを少々。分散システムの非同期性といっても二つの意味があって、ひとつは分散システムを構成するコンピュータは独立だから、計算がタイミング的に揃わないという意味。もうひとつは通信の非同期性。後者はさらに二つの意味を含んでいて、通信しても送信と受信に時間的なズレが生じるという意味と、送信側から受信側がちゃんと受信しているか(そして処理するのか)がわからないという意味があります。この辺の定義をあいまいのままだと議論が進まない。

ただ、分散システムにおいて、もっとも本質的な制約は(予測不可能な)通信遅延。例えば上述のいずれの非同期性も結局は(予測不可能な) 通信遅延が原因です。非同期だから通信遅延の問題が起きるわけではありません。仮に通信遅延がない、または事実上無視できれば、同期的に計算することも不可能ではないし、そもそも通信の送受信のタイミングもずれないし、受信有無の確認も簡単にできるようになるはず。なお、パケットロスなどの通信失敗は、無限大の通信遅延と扱えることができます(受信側からみれば同じこと)。だいじなのでもう一度繰り返しますが、分散システムは(予測不可能な)通信遅延という制約を持っており、その通信遅延がもたらす影響は様々。だから、その様々な影響を知っておくことは分散システムとつきあううえで重要ですし、非同期性も通信遅延の影響のひとつにすぎません。

さて障害やネットワーク分断は分散システムの特質ですが、ただ、これらはシステムの信頼性に関わる問題で、ちょっと次元が違うというか、同期系システムでも起きうる問題ということ。分散システムにおいて何らかの障害やネットワーク分断が起きたとき、通信遅延があるので、システム全体の現在の情報を得ることができないし、障害発生やネットワーク分断の検知が難しい。分散システムは、遠い星との通信みたいなところがあって、相手の星が見えていても、光の速度は有限だから、通信遅延が避けられないわけで、そうなると、その星はすでに超新星爆発を起こしているかもしれない。つまり、分散システムにおいて、いまこの瞬間、他のコンピュータが動いている保証はないということです。

なんとか障害やネットワーク分断を発見できたとしても、分散システムではその対処はさらに難しい。例えば一部のコンピュータが壊れた、またはネットワークから分断されて、一部の機能が失われたとき、残されたコンピュータで機能を代行するにしても、どのコンピュータが代行するのかを残されたコンピュータ間で同意を作らないといけない。しかし、分散システムの複数のコンピュータでひとつの同意をとることは、正常に動いている分散システムでも難しい。通信遅延があので、複数のコンピュータ間で同意がとれているかを判定するのは難しいということです。これがいわゆる分散同意問題となります。

2012年4月14日

秋葉原の某量販店にいって、26インチのデジタルテレビ購入。テレビをほとんど見ないので、サイズは大きくなくてもいいので。選ぶときに国内大手メーカのテレビを見比べたのですが、メーカによってこんなに差があるとは思いませんでした。一部を除くと韓国や台湾の液晶パネルを使っているので、差が付かないと思いきや、画像処理というか、液晶パネルの制御によって、汚いという言葉しか思いつかけない画質の某重電系メーカ様や、高性能な自社液晶がご自慢なのに、その液晶を画像処理でスポイルさせているメーカ様など。テレビは買うつもりもないと見比べたりしないので、いい機会でした。国内電機メーカはどこもテレビ事業は赤字になっていますが、同じ赤字でも内実は相当差がありそう。

それと昔、大きな家電量販店に行くと、大画面テレビとサラウンドシステムのホームシアター的な展示があったのですが、最大規模といってもいい、その量販店でもほとんど残っていない。その背景のひとつにはテレビの見方が変わったのでしょうね。大画面で映画をみるより、Youtubeなどで、小さい画面でもいいので、多様なコンテンツを見る方が需要があるのかもしれません。時代の流れを感じますね。

2012年4月13日

一昨日、NTTのIP6の問題を書きましたが、(業界的にはちょっとはよくしられた)IPv6嫌いということになっているので、いろいろいわれそう。ただ、IPv6を評価しないのは、原始共産主義というと怒られますが、インターネットの聡明期の牧歌的な理想主義が垣間見えてるというのか、90年代以降のインターネットの商用化における問題解決に貢献できるとは思えないから。もちろん、アドレスの問題はIPv6で解決できるかもしれませんが、インターネットの本質問題はそれだけではないはずだし、インターネットが世界的インフラ化した現状では、インターネットを大きくかえるチャンスは多くない。その貴重なチャンスをIPv6によるアドレス問題解決だけで使ってしまうのはもったいないです。

2012年4月12日

昨日、ソニーの悪口を書いた祟りでしょうか、自宅のソニー製テレビの液晶が割れていることに気づいた。テレビを見ていないので、いつ壊れたのかもわからないのですが、どうしたものでしょうか。テレビはほとんど見ないから壊れたままでもいいのですが、DVDも見れなくなるし。かといって修理よりも買い換えの方が安くなりそうですし。

2012年4月11日

2012年3月期連結決算(米国会計基準)が、5200億円の最終赤字。同社のエレクトロニクス部門は赤字、黒字は金融、音楽、映画だそうですが、結局、エレクトロニクス部門の立て直ししかないのでしょうが、端から見ていても固定費を相当圧縮して、選択と集中させないと難しそう。まぁそれでもシャープなどと比べるといいのでしょうが。ところで最後にソニー製品を買ったのはいつだったのでしょうね。

2012年4月10日

午前は慶大大学院の授業、夜は勤務先の大学院授業。前者は45人ほど学生さんがおられました。なんか楽な授業と勘違いされているみたいですが、昨年はレポート提出者でも15%以上はDをつけていて、そんなに楽な授業ではないと思うのですがね。それにしても相変わらず、情報系の学生さんは1/3ぐらい。ただ、その方がレベルが高くなるという不思議な状況が毎年繰り返されていますが、どうなっているんでしょうかね。勤務先ではないので関知する立場でもないし、もっとも関知したくもないですが。

2012年4月9日

NTT東・西のIPv6サービスが、6月早々に海外のIPv6サービスから遮断される可能性があるそうですね。いくらなんでも将来、問題を残す実装ということは現場の方々はわかっていたと思うのですがね。それはともかっく、気になるのは今回の騒動も、結局、同じ系列の携帯電話キャリアのように世界初の2Gや3Gに拘ったために孤立化したのと同じパターン。つまり「世界初」に拘りすぎて、世界の状況が決まる前に内部的なIPv6ネットワークを構築してしまい、気がつくと世界のIPv6から孤立化ということでしょうか。この20年間ぐらい、NTTグループ各社はこのパターンの失敗を繰り返されているように思います。いい加減学習してほしいところですが、やっぱり無理なんでしょうかね。

2012年4月8日

研究者の評価方法は時代とともに変わっていくのですが、最近の傾向はサイテーション(他の論文からの参照)重視でしょうか。サイテーションを調べるサービスが登場したこともあるでしょう。自然科学系は論文数からインパクトファクターに評価軸が移行していましたが、コンピュータサイエンスに限ると伝統的に国際会議重視もあり、インパクトファクターをスルーして、サイテーション重視に向かってますね。

学生さんは、研究室を選ぶときは、希望する指導教員のサイテーションは調べておいた方がいいと思います。いくつかサービスがありますが、MicrosoftのAcademic Searchなどに、希望する指導教員の名前を入れればわかるはずです。なお、同姓同名の別の研究者の論文をカウントしていることも多いので、よく見極めないといけないのですがね。

国内のコンピュータサイエンスに関していうと、和論文を多く書いてこられた方が多いのが実状。でもサイテーションは英論文が対象だから、サイテーションはつかない、つまり和論文はゼロカウント。だからといって英論文をたくさん書いていればいいかというとそうでない。他の研究者に影響を与える、つまり他の研究者の研究に何らかの貢献しなければ参照されない。たまに論文数が多いのに、研究者の過去の論文数に対してサイテーション数が少ない方をお見かけしますが、論文を書くだけ無駄とはいいませんが、そこまでいくとその方の大多数の論文は研究として価値が見いだされていない状態。ちゃんとした論文であれば自ずと何人かは参照してくれるはずですから。一概にはいえませんが、論文によってはばらつきがある� ��しても研究者のサイテーション数が、その研究者の全論文数の3倍よりも小さければ、価値がある研究をしているかが疑われるかと。

サイテーションが高い研究者というのは、当該分野の他の研究者から参照されている論文を数多く書いていることになりますが、数多く参照されるためには研究としてオリジナリティと新規性が求められます。まぁ分野にもよりますが、オリジナリティかつ新規性がある仕事をしている方というのは、他研究者の後追い的な研究は避けてきた人が多く、学生さんが新しいことをやりたがっても寛容なことが多いのではないでしょうか。逆にサイテーションが低いというのは当該分野の研究者でも、他の研究者から研究を認められていないことと同じなのですよね。研究の世界では、鳶が鷹を生むことはないので、そうした研究者に育てられても、オリジナリティかつ新規性がある研究者や技術者にはなれる可能性は高いとはいえないので� ��よね。

サイテーションをあげるには、オリジナリティかつ新規性の高い研究をすること。実際、トップ国際会議の採録論文だからサイテーションが高いとは限らないんですよね。オリジナリティのある新しい研究に関する論文であれば、採択難易度の低いワークショップでもサイテーションは高くなることも多い。もちろん、トップ研究者を目指すならばトップ国際会議は通すのは必要条件だとは思いますが、結局、論文は参照されなければ価値がないのも事実。トップ国際会議に通すことだけが目的化して、流行ネタを後追いでやっている論文を散見しますが、新しいアイデアでもない限りは、そうした論文は参照されないのですよね。

なお、研究者の評価基軸はさまざまです。サイテーションも評価基軸のひとつにすぎませんし、絶対的な評価基軸はない。例えば年齢が高いほどサイテーション数は多くなります。これは論文は発表後、年月が経ってから参照されることもあるから。また共著者が多い論文はサイテーション数が増えやすいといわれています。というのは研究者のサイテーション数をカウントするときは、その研究者自身の他論文からの参照は除外しますが、共著者の他論文から参照はカウントすることがあります。そうなると共著者数が多いほど、各共著者がその後に書いた論文から、もとの共著論文を参照していくれる可能性は高まるからです。ただ、共著者数の傾向は分野によって違います。コンピュータサイエンスでも、例えば理論系は少ないこ� ��が多いですが、ハイパフォーマンス系は共著者数が多い、十人を超えている論文も少なくなく、サイテーション数が大きく増える傾向があります。だからサイテーションも一つの参考指標に過ぎないはず。前述のMicrosoft Academic Searchにいたっては調査対象がよくわからないし、前述のように間違った参照カウントも多いのが現実。結局は研究者評価は主観を含めて総合的に評価するしかないのですよね。

2012年4月7日

いろいろ残務がありますが、私事でこの週末は自宅待機状態。というか、休日は休むのが当たり前。

2012年4月6日

大手町で講演。ところで新書を書きました。タイトルは「IDの秘密」(丸善出版)。内容はIDといっても、Identifiicationのことで、ひたすら付番の話です。一部のプライバシー問題好きの方が期待するような個人情報の話ではありませんので誤解なきよう。個人情報は何かと話題になるし、国民IDなどで書籍がいろいろありますが、本書は対向するわけではないのですが、人に限らず、モノを含めて付番する方法や事例をまとめたものです。個人情報も重要ですが、その基礎となる付番はもっと重要なはずですから。なお、新書ということで小ネタ重視(例えば書籍の裏表紙にはなぜ二つもバーコードが付いているのか)。というわけで本文より、事例紹介のコラムの方が業界ネタ満載にしたので面白いかと。Amazonなどでも売られているようなので 、買ってください(Amazonへのリンク)。書店でも並んでいました(写真、出版社の系列の書店ですが、なんと平積み)。というわけで宣伝をしておきましたが、勤務先の業務執筆なので、当方には印税が入らないのですよね。

2012年4月5日

昨日、Oracleのことを書きましたが、データベースは強いですよね。データを格納したり、アクセスすることは情報システムがある限りは必要とされます。もちろん、関係データベースに代表されるデータ構造への要求は時代とともに変わるかもしれませんが、データの格納やアクセスの基本技術は変わらない。仮に当方がいま情報系の学生さんだったら、データの格納やアクセスの基本技術、例えばトランザクション当たりを勉強しておくと思います。トランザクションは地味な技術で、きっちり理解している人は少ないのですが、今も昔もデータベースの根幹技術のひとつ。つまりトランザクションの原理を一通り理解していれば、銀行の勘定系の仕事もできるし、流行のSNS企業のデータ管理の仕事もできる。もちろん、時代とともに� ��れ替わる新しい技術を追随するのもいいのでしょうが、時代が変わっても変わらない技術を抑えておくことも重要。移り変わりの早いIT業界では、流行ネタだけを追いかけていても身につかないですから。

それは研究者でも同じで、例えばデータベースの研究者でも、トランザクションに代表されるようなデータベースのコア技術を知らない人がいます。本人がそれでやっていければいいのでしょうが、データベースに限らず、どの分野でもコア技術の知識が欠けていると研究者として伸びない方が多いし、ロバストな研究ができない。つまり一過性の研究で、長く生き残るような研究はできないのですよね。

2012年4月4日

六本木でOracle Open World(OOW)とJavaOneが開催されていますが、その話題をあまりききませんが、Oracleはかつて派手なイベント(OOW)を開いて、成長ぶりをみせて、顧客を獲得してきただけに、いささか拍子抜け。まぁ、昔はIBMやSybaseなどの商用RDBMSがライバル製品だったので、ライバル企業よりも派手に見せる必要があったのでしょうが、いまはMySQLなどのOSS系のRDBMSがライバル。従来のような対抗手段は通用しないのでしょう(MySQLもOracleなのですがね)

さらに話題になっていないのがJavaOneですが、まぁそもそもJava自体に新味ある話題があるわけないので、サンフランシスコのJavaOneの話題を話す程度なのかも。とはいえ個人的にはJRocketのFlight Recorder機能がJVMに統合された意味は大きいと思っています。PythonやRubyに代表される軽量言語がもてはやされていますが、Javaはプロファイリングや実行モニタリング機能は進んでいます。PythonやRubyはそうした機能が非常に弱く、実サービスの運用は難しい。もう少し正確に言うと、運用サイドに開発者がいて、システムの挙動をみられるのならばともかく、他者のサーバで運用するのはなかなか難しい。少なくてもPythonやRubyで書かれたアプリケーションは運用できても、ミドルウェアは使いたくないです。その点、エンタープライズ市場に長けたOracleはJavaの強みを伸ばしてきたわけで、さすがによくわかってらっしゃるというところでしょうか。

2012年4月3日

まだ2011年度が終わらない。正しくは終わらしたくても終わらない。ところで午後から風が強かったですね。春の荒らしということなのでしょうが、ちょっとすごかった。

2012年4月2日

早朝と夜に出勤。世の中は新年度らしいですが、個人的には認めたい。まだ2011年度と宣言したい心境、というか2011年度内締め切りの報告書が終わっていない。

2012年4月1日

全日空のフランクフルト発成田行きに搭乗、到着。往路の全日空の羽田発フランクフルト行きは、CAさんのお言動はお世辞でもいいサービスとはいえず(当方以外を含めて客を怒らせて楽しんでいるとしか思えず)、日系エアラインもUS系並のサービスになったんだなぁ、と思ったのですが、復路はまともでした。それにしても往路はひどかった。US系でもあれはない。

2012年3月31日

今回の出張はいいことがありません。往路はストで足止め、滞在中はゼネストで混乱、現地を脱出。復路は無事かと思いきや飛行機が遅れる。マドリッドからフランクフルト空港を経由して、成田に戻るのですが、フランクフルト空港の乗り継ぎ時間は1時間45分なのにマドリッド発フランクフルト行のルフトハンザ便が1時間15分ぐらい遅れる。間に合ったものの先週と同様にフランクフルト空港の乗り継ぎは大急ぎ。

2012年3月30日

マドリッドに移動。夜はマドリッドの王立歌劇場(Teatro Real)でオペラ「二人のフィガロ(I due Figaro)」を観劇。昨年、Teatro Realはきいていて、そのときは演奏が好印象だったのですが、今回は指揮がザ・マエストロといえるRiccardo Muti。Mutiはスカラ座でオペラで一度聞いているのですが、そのときの演奏はオペラ以外、オーケストラものを含めて、当方にとってベストワンという出来だったので、今回の組み合わせはいいはず。実際、演奏は非常にいい出来でした。さて前回のTeatro Realはブラスの良さが目立っていましたが、今回はMutiならではの、跳ねるようなストリングの音が出ていて、よかったです。ちなみにMutiの「二人のフィガロ」はザルツブルクなど、いくつかの音楽祭で上演されており、海外オペラ雑誌では2011年のベストテンに入っていますが、今回も出来はよかったと思います。ひとつ残念というと、演目的に聞かせるアリアが少ないことでしょうか。ただ、Mutiは普通の曲やオペラは振らない方なので、仕方ないわけですが。

さて歌手ですが、全員若い。Figaro役がMario Cassi、最初は声が出ていない感じですが、後半はよかったです。Almaviva伯爵役がテノールの歌手Antonio Poli、彼は出来はよかったですね。一番出来がよかったのが、Susanna役がEleonora Buratto。歌声も演技もすばらしい。伯爵夫人のLa Condesa(ロジーナ)役はトルコ系のメゾソプラノ歌手のAsude Karayavuz、小姓のCherubino役がAnnalisa Stroppa。この5人はメジャー歌手になるのではないでしょうか。Torribio (Don Alvaro)役がAnicio Zorzi Giustiniani、Plagio役がOmar Montanari。演目的に重唱が多かったのですが、そこは見事でした。指揮者と歌手の力量のなせるわざでしょうかね。あと舞台は凝ったものではないのですが、歌手を前面に出しつつも、奥行きをうまく使っており、よかったです。

ところでAlmaviva伯爵はセビリアの理髪師では紳士かとおもっていましたが、フィガロの結婚では浮気性が問題になり、二人のフィガロでは娘の幸せを考えない、困ったお父さんになりましたね。逆に言うとこうした人間くささが、フィガロのシリーズの人気の秘訣かも。

2012年3月29日

国際会議(PAAMS2012)の座長。国際会議はスペインの中西部になるSalamacaという街。去年も同じ時期に訪れていたりと、個人的には新味ゼロ。ただ、今年は違いました。というのはスペイン全土で大規模なゼネストがあり、交通機関はストップ、昼頃から学生さんのデモ、といっても仮装行列から始まって、夕方から本格的なデモ行進。子供連れで参加している人も多いのですが、参加している人は真剣。爆竹をバンバンならしており、自動車やゴミ箱が燃やされたりと、さすがに身の危険を感じることになりました。こんなに荒れたのは30日にスペイン政府で、大幅歳出削減法案と消費税率の大幅増の閣議決定が予定されており、その抗議活動のひとつ。結局、消費税の税率増は見送られたものの、歳出削減は決まったようです。ちなみにス� ��インは失業率は22%くらい、南部は30%を超えている状態。経済的には非常にきわどいところに来ている感じ。ちなみに現地の研究者数人に解決策はあるのかと訊いたら、一様に策がないという答え。

2012年3月28日

国際会議(PAAMS2012)の座長・発表。スペインとポルトガルの研究者が主体のコミュニティの国際会議ですが、いろいろつきあいがあって行くことにしたのですが、両国の研究方向性が見える点では非常にいい機会。欧州の研究トレンドは米国と違うし、その欧州の研究トレンドもEU系の科学技術研究助成予算、つまりFPをとれる研究者と、自国の科学技術研究助成予算を取りに行く方では違います。この国際会議はその自国予算の研究が主体。それだけでにターゲットが明確になっていますね。

2012年3月27日

フランクフルト空港に朝6時に到着。3日ぶりでしょうか。でも大きな問題はフランクフルト空港の運営会社の労働組合がストライキ。このため大方のフライトはキャンセル。搭乗する予定だったルフトハンザのフライトもキャンセル。ひとまず3時間ほどあとのフライトに振り替えてもらって、なんとか到着。朝、フランクフルト空港は閑散していました。ちなみにフランクフルト発だけでなく、フランクフルト着便もキャンセルになっているので、ルフトハンザの成田行きや、ANAの昼に出る成田行きは仮に飛んでも、欧州都市からフランクフルトに移動できないわけで、困っている方も多そう。当方は3時間ちょっと遅れの12時過ぎの飛行機に乗れましたが、人によっては22時以降の飛行機になった方もおられるようです。

というわけでマドリッド空港に着いて、 それから列車でサラマンカに移動。ところでマドリッドの空港から市内に移動するときに乗ったタクシーが飛ばす、飛ばす。プリウスだというのに130km/hオーバー。日本ではまず体験できない世界。当然だけど、バッテリはフル充電状態。

2012年3月26日

午前中は福岡で国際会議で基調講演。そのあと大阪で打ち合わせ、夜は羽田からフランクフルトに移動。なかなかハードな一日。ただ、フランクフルトへの到着は早朝なので、長い長い一日というべきか。

ところで、Twitterに、PCスキルのピークは過ぎていることと、情報系の学生さんでもPCのソフトウェアのインストールを親に頼る人がいると書いたのですが、その状況も問題なのですが、むしろ意外だったのはIT業界に生きる方にはPCのソフトウェアのインストールは出来て当たり前という思う方が多かったこと。PCに慣れ親しんだ世代と携帯電話やスマートフォンを使いこなす世代のギャップなのですかね。スマートフォーン系のソフトウェアのインストールと比べたら、PCの場合は難易度は遙かに高いはずなのに。少なくてもIT業界に生きるならば、情報システムにおいて、何が難しいのか、何か簡単なのか、を見抜けるセンスは必須なはず。それがわからなければ何が難しいかもわからないし、難しいことを簡単にすることはできない。P Cのソフトウェアをインストールできない人も哀れですが、前述のセンスがない人の方がもっと哀れなはず。

2012年3月25日

休日出勤。一昨日までの海外出張中の雑務処理もあるのですが、実は明日から別の海外出張なので、その事前処理。処理量的には2週間ぐらいの時間が欲しい。

2012年3月24日

出張疲れでダウンしたいのですが、そうもいかないところが辛い。さすがに年度末に不在になると、方々に迷惑をかけることになり、申し訳ないかぎり。それにしても問題の案件が報告書絡みというのも複雑な心境。予算をもらったら報告書を作るのは当然なのでしょうが、論文として成果は出しているわけで、報告書のために自分の英論文を和訳するのって、時間の無駄なのですよね。それに報告書って、書いて出すことが重要で読まれないのですよね。その時間で研究したいのですがね。

2012年3月23日

さて成田着。フランクフルトの乗り換えは、時間がないうえに、ターミナルAからB、それも各ターミナルの端から端だったので、大変だったのですが、なんとか間に合う。数日後には再びフランクフルト、そして来週末にはまたフランクフルト発成田行きに乗るんですよね。

さて今回の出張で思ったことを少々。そのひとつは自分の研究を自慢したいのと、自分の研究がたいせつだと思っているのは違うはず。PerComのように難関国際会議になると、論文が採録されることが自体が目的化した研究になりやすい。ただ、残念なことは採録されやすい論文が、重要な研究とは限らない。発表している本人さらその研究が本当に重要だと思っているのかが疑問な論文もちらほら。論文採択は後からついてくることであって、それよりも研究自体が価値があることが重要だし、そのためには研究している本人が、まずは自分の研究は大切だと思うことが重要なはずなんですけど。

研究者の評価が、難関論文誌や難関国際会議の採択実績から、論文参照数に変わりつつある現状では、難関国際会議に通すための論文は評価をされないし、むしろ他者にとって参考になる研究をした方がいいのですが、考え方が切り替えられない人がまだまだいるんですよね。

それと研究にいろいろ要素を盛り込みすぎ。Best Paper Award候補の論文の一つで、Awardに選ばれることを意識しすぎたのか、プレゼンテーションに内容を盛り込みすぎで、結果として内容が薄く見えるているという、絵に描いたような駄目プレゼンテーションがありました。読む側からしてみると、読むべき論文はたくさんあります。論文の原則は1論文は1テーマ。これが難関国際会議で採録される要件なのですが、それはプレゼンテーションも同じで、内容を盛り込みすぎと、研究が浅く見えるんですよね。


どのように歳地球ユダヤ教

2012年3月22日

国際会議(PerCom)はNSF関係者によるパネル。PerComの立ち上げから関わった立場でいうと、PerComがここまで成功するとは思わなかったのですが(一時はコンピュータサイエンス分野で採択率が一番低い難関国際会)、実はその背景にはPerCom関係者の米国大学関係者がなぜかNSFに出向する方が多くて、予算トレンドが押さえられていたという裏事情があります。というわけで毎年、資金的にもNSFがバックアップ、さらにNSF関係者が集まります。ただ今回のパネルに関しては予算的なメッセージは見えなかったのですがね(いろいろありましてね)。

さて午後からルガーノから列車で乗り換えを何回もしてチューリッヒに移動。それからチューリッヒ空港にまた移動、そしてフランクフルトを経由して成田。もちろんチューリッヒから成田は直行便もあるのですが、会議にいる時間を延ばすためにフランクフルト経由となってしまいました。

2012年3月21日

今日の基調講演はDFKIのPaul Lukowicz教授。センサーを使ったユーザ行動に関する自分の研究をひたすら紹介。どうなんでしょうかね、当該分野を知らない人にはサーベイになったかもしれませんが、逆に知っている人にとっては自慢話にしか聞こえなかったかも。当方も来週は別の国際会議で基調講演があるので、他山の石にしないようにしないとね。

午後は座長のお仕事。国際会議(PerCom)のようにトップ会議は質疑が活発なので、座長は無理して質問をする必要がない意味ので楽。ただ、発表者が学生さんの場合、発表やその質疑が就職などキャリアに関わるから、別の意味で気を遣うんですよね。三人中一人は座長がフォローする事態になってしまい、終わった後から彼の指導教員から真顔でお礼をいわれてしまう。その発表は違いますが、当方が座長のセッションに、Multi-dimentional scalingの1手法を使って位置推定をする研究があったのですが、確かに高度な解析技術を使うと推定精度は上がることはありますが、ただ高度な解析技術というのは対象を選ぶし、特に現実世界を対象にした場合は環境に依存します。精度があがることと、手法そのもののロバスト性は違うのですよね。

ところで雑談で話題になったのが、カリフォルニア州が大学予算を削減して、そのため生徒募集を絞るという話。カリフォルニア州は財政破綻状態なのですが、こんな事態になっているとはね(日本でも報道されていました)。実際、PerComも一昨年の欧州開催と比べると米国からの参加者が減っています。さらに参加してくる米国大が絞られてきており、あまりいい傾向ではないのですよね。

2012年3月20日

国際会議(PerCom)の基調講演はケンブリッチ大学のAndy Hooper教授。コンピュータサイエンスでは最も有名なビジョナーの一人。ということで新しいビジョンを話すかと思ったのですが、環境と発展途上国向けの話があったぐらいで、ビジョンらしいビジョンはなし。話の多くは彼の研究室からスピンアウトしたベンチャー会社Ubisenseの事例紹介。ただ、その事例が桁違いというか、工場を中心に現場で広く使われのはさすがというしかありません。それとやっぱり哲学がありますね。

さて国際会議の論文ですが、おもしろい研究と、どうしてこの論文が通ったの?思いたくなる研究が両極端。プログラム委員の一人して複雑というか反省すべきですね。それと技術の国際会議だから仕方なのですが、技術を提案するのはいいのですが、なんでその技術を提案するのかというか、哲学が感じられないのですよね。研究できる技術だから研究してみただけという研究が多い。とくにUbiquitous/Pervasive系の研究は「デバイスが手元にあるから、そのデバイスを使った研究してみました」ということになりやすいわけで、研究するからにはその研究をしなければならないことを、きっちり説明してほしいところ。

ところで国際会議の昼食はランチというか、スナック以下。野菜入り冷ライスとチーズだけ。イタリア語圏ということで期待したのですが、スイスはスイスでした。

2012年3月19日

国際会議(PerCom)の1日目。PerHotというワークショップに出ていたんですが、PerComのコアメンバーが参加していたのにも関わらず、PerComに対して自己否定的な意見が多かったですね(自己否定な内容自体は当然)。研究に出口を求めるものではないのですが、Ubiquitous Computing系はその出口として人間の行動把握に活路を見いだしていますが、Pervasive Computing系は出口がなくなっているんですよね。特にPerComは発足時からHCI的な方向性を否定してきているので、人間の行動把握は向けなくなっているし、かといって人間抜きで系は作れない。まぁ、多くの方にはUbiquitous ComputingとPervasive Computingに違いを求めることは意味を見いださないと思いますが、当事者は結構真剣なんでしょう。

結局、Ubiquitous/Pervasive Computingも手段ですから。どんな問題を解決したいのかがたいせつで、手段を先に決めて、そのあとに何の問題を解くのかを考えるのは順番が逆なんですよね。つまりニーズ主導であるべき。それから解きたい問題と解くべき問題は同じになるとは限らない。後者にプライオリティをおくべきなんですが、この研究コミュニティはそれができてきたのでしょうか。

2012年3月18日

チューリッヒに移動・一泊。それからスイス南部のルガーノに移動。列車で2時間半ほどの移動ですが、山間部路線ということもあって、7割以上はくねくねしたカーブの連続。そこを高速運転するためにカーブに結構カントがついているので、車内は振り子のように揺れる、揺れる。体質的に酔いはしませんでしたが、さすがに辛くなりました。乗り物酔い気味の方にはこの路線は勧めできませんね。さてルガーノはスイスといってもイタリア語圏。レストラン=イタリアンなのですが、イタリアに近いだけあってお味はよかったです。なお、チューリッヒと比べると3割ぐらい安い感じ。まぁ、チューリッヒが異常なのですがね。

2012年3月17日

今年度末は大きめの予算が終わることもあり、研究テーマの棚卸しと3〜5年先の研究を構想中。研究したいことはいっぱいあるのですが、全部はできないし、研究者としては、研究するならば1番を狙わないといけない。流行っているからといって手を出しても、2番以下という中途半端な結果になります。

個人的には、あるテーマが流行っているからといって、そのテーマの研究を始める方の気持ちがよくわからない。もちろん国際会議では流行っているテーマに論文採択が集中する傾向があるので、国際会議の論文実績をあげるのにいいのでしょうが、トップ国際会議に採択されたからといって、当該分野で1番になれるわけではない。というのは流行っている時点で先行者がいるわけで、後追いで抜けるのは余程、しっかりした研究組織が集中的に研究した場合ぐらい。1番を狙うならば流行っていないところを狙うべきですよね。

それでも学生さんのうちは流行ネタでもいいように思います。先ほど書いたように国際会議は通しやすいので、実績はあげやすい。特に学生さんのうちは自分の研究方向性に不安を持ちやすいのですが、他も似たような研究をしていると不安が少ないし。ただ、それは学生さんのうち。博士をとったら、パイオニアであるべきですよね。つまり流行ネタではなく、流行を作るべきなんですよね。つまり、オリジナルの研究分野を作って、その分野の先駆者になるべき。たとえすぐには誰もついてこなくても。海外を含めて、これができるか否かが、研究者としてのその後を決めているように思います。研究者って、1番とそれ以外しかないから。そして2番以下はいらないから。

さてフランクフルトに移動。今年初めの海外出張。

2012年3月16日

スマートフォン対応炊飯器だそうです。要はスマートフォンで炊飯設定をして、そのスマートフォンを炊飯器にかざすとその設定で炊いてくれるというもの。現状のアプリケーションや利用目的は?ですが、工夫次第で大化けするかもしれません。いずれにしてもスマートフォンと炊飯器で対局にあるはずで、それを連携させる製品を出したということは積極的に評価したいですね。それとこれの発展系を想像するのはおもしろい。ただ、昔の携帯電話でなんでも操作しようという話のデジャヴーは勘弁願いたいところ。

2012年3月15日

3月10日の続き。(経済的な理由で)半導体の微細プロセスが、数が出るチップに限定されるとコンピュータサイエンス、特にソフトウェアとしてはいろいろ課題が出てきます。いままではなんだかんだで、半導体技術の向上で、ソフトウェアも速くうごくし、メモリ空間も広がってきました。

ひとつの方向性はクラウドなどの外部に頼る方法。逆にいうとクラウドコンピューティングが脚光を浴びるのは、長期的には、所有から利用へとか、伸縮可能性とかではなく、端末側の性能の伸びが落ちてきており、その分を他で補わなければいけない。その補う先がクラウドコンピューティング。だから半導体の技術トレンドとクラウドコンピューティングは無関係ではないし、むしろ半導体の技術トレンドとクラウドコンピューティングの必要性を作り出したと行っていい。

もうひとつは純粋にコンピュータサイエンスで、半導体による性能向上の鈍化を補うこと。アルゴリズムなどの改良をするしかわけで、コンピュータサイエンスの真価が問われることになります。ここで気になるのは1980年代のオブジェクト指向言語のように、当時は性能的に使いものにならないといわれながらも、半導体進化によるコンピュータの性能向上によって、性能的にも実用化してしまうことは難しくなってくること。もちろん、上述のクラウドコンピューティングを利用すればいいわけですが、以前のように「いまは性能的に問題があっても、コンピュータの性能向上によって解決できるはず」というエクスキューズは難しくなります。

2012年3月14日

午前中、2月に行った排出権取引の実証実験の売上金、全額(94600円)を日本赤十字社の東北大震災義援金に寄付。皆様、強力ありがとうございました。先月のうちでもよかったのですが、実験自体がバレンタインと絡めていたので、ホワイトデーに寄付してみた次第。午後は講演。

2012年3月13日

米国の大統領選では雇用が争点になるのでしょうかね。候補者はもちろん、IT業界も米国内の雇用に貢献しているというレポートがいろいろでてきました。こちらはMS様が出されたものですが、一生懸命数字を作ったという感じで、記事にもあるように突っ込みどころ満載のようですね。

ただ、根本的に行ってITで雇用拡大って無理があるんですよね。IT業界は典型的な労働集約型の産業。つまり人件費が大きなコスト要因になっているわけですから、その人件費を下げるためには、質さえ確保できていれば低価格で提供できる場所に仕事が流れるのは仕方ないのないこと。そして、これから中国やインドで、コンピュータサイエンスを学んだ人が増えてきます。

どうすればいいかは難しいことですが、実は米国政府というか、ホワイトハウスの科学技術政策作成委員会が、前政権(ブッシュ政権時代)の終わりに出したPCAST(President's Council of Advisors on Science and Technology)という報告書(2007年)で、中国やインドでコンピュータサイエンスを学んだ人が増えることで、米国のIT技術者が問題になることを指摘していて、その打開策として複合分野(multidisciplinary)に精通した技術者の要請を謳っています。つまりコンピュータサイエンスとそれ以外の分野に精通した技術者を養成することが、米国の競争力を維持に重要としています。

2012年3月12日

業務執筆することになった新書を校了。まぁいろいろあったわけですが、いずれにしても勤務先の担当、そして出版社の担当にたいへんなお手数をおかけすることになりました。それと専門とかけ離れた内容だし、研究的に関心があるわけでもなく、かなり辛い執筆でしたね。もちろん、書くからには手は抜かずに書きましたがね。この執筆に要した時間で自分の研究をさせてほしかったというのも本音だったりしますが、研究者も社会貢献が求められているし、世の中の役に立てばいいことにしましょう。

2012年3月11日

休日出勤。それも校正。

2012年3月10日

先月末の半導体絡みの話の続き。特に半導体ビジネスがあたえる次世代ネットワークへの影響について。32nmなどの微細プロセスのチップになると、露光機一台で100億円近い。半導体工場をつくるのに千億円単位のお金がかかります。そうなると月産何十万枚と作るようなチップでないと割が合わない。逆に言えば、それより数が出ないチップは45nm以上のプロセスで作ることになり(面積あたりのチップ生産数はプロセスサイズによってきまる)、これまでのように半導体技術の向上の値段が下がるということはなくなります。つまり高止まり。

その打開策が、いろいろな機能を詰め込むチップを開発して、それを大量に生産する。つまりIntel の戦略。例えばIntelはプロセッサ用周辺回路チップにありとあらゆるインタフェースをいれようとしています。例えば高速ネットワークである10Gbs EthernetやInfiniBandも組み込まれるでしょう。そうすると本来、半導体需要が少ない機能も半導体技術の向上による恩恵(高性能化と低価格化)を受けられることになりますが、ただ気をつけないとけないは恩恵を受けるのは数が出るチップに載る機能だけ。ネットワークの場合、コンピュータ側のチップは数が出ますが、インフラ側機器、例えばルーターなどのチップは数が出ないので、今後の半導体技術の向上による恩恵はないことになります。

というわけで、今後ですが、ネットワークはインフラ側機器に機能や性能を頼るネットワーク技術やアーキテクチャは流行らない。端末側のチップに機能や性能に頼る方向に進むということです。この影響はデータセンターを含む高性能ローカルネットワークから受けることになりますが、長期的には広範囲に広がるはず。もう一度書きますが、ルーターなどのネットワークインフラはこの先、性能と価格は劇的に改善されないということです。それを前提に、ネットワークを含むシステムアーキテクチャがどうあるべきかを考えましょう。

2012年3月9日

所用で横浜方面。慌ててオフィスに戻ってきてお仕事。

2011年国内サーバー市場動向の調査レポート(IDC Japan)。この10年間は市場規模は縮小し続け、2000年前後とくらべると市場規模は半減状態。今年は上昇したもののスパコン「京」がなければ減少だったでしょう。サーバ台数の全体としては増加傾向ですが、海外と比べると非常に低い水準。国内IT業界では成長産業のように語る方がたくさんおられます。たまに学生さんで能力以上に自分をビッグに見せたがる方がおられますが、そうした誇張どころではない状況。現実をともない虚勢を張っていてもジリ貧になっていくだけ。まずは斜陽&縮小産業であるという現実を素直に認めるところ再出発しないと本当に先がない。仮に国内IT業界を維持していくならば、国内市場だけに頼っていたら市場縮小とともに消えるだけ。それは企業も人も同じですね。

2012年3月8日

朝、六本木のミッドタウンで講演、というかレクチャー。オフィスの用事までに時間があったので、富士フイルムのビルで開催されているユージン・スミス展を見ていく。彼はヒューマニズムの写真家と呼ばれますが、本当に被写体の人間の生死を感じさせる写真なのですね。彼の写真というと有名な「楽園への歩み」の印象が強かったので、おどろきました。

2012年3月7日

東京国際フォーラムで開かれた環境省系のイベントで講演。副大臣もいらしているとはね。

Raspberry PIの製品の記事が国内メディアにも登場(もちろん、年末に日経コンピュータが大きく書いていますが)。前にも書いたことですが、Raspberry PIの25ドルコンピュータ(国内では定価3400円らしいけど)の評価は、格安組込ボードとみるか、ポストPCの先駆けとみかで違ってきます。後者としてみれば、ポストPCに向かうトレンドが見えてくるはず。ポストPCの要件は、PCよりも数が売れること。コンピュータは数が売れれば性能向上するし、値段も下がる。ただ、そのためにPCよりも大きな市場を持つことが必須で、その有力市場とは発展途上国しかない。その意味では先進国向けのスマートフォンやパッドがポストPCの先駆けになるとは限らない。実際、発展途上国は識字率が高いとはいえず、ディスプレーがいいとは限らず、音声インターフェースの方がいい場合もあります。いまはWebが全盛な時代ですが、ポストPCにおいてWebがいいのかも再考すべき問題。ひとついえることはPCの延� �線上に考えてはいけないということ。

それからRaspberry PIについては場所がケンブリッチにあるということが重要。ケンブリッチというとARMがありますが、ARMを筆頭に、Raspberry PIもケンブリッチ大学が戦略的に育てたベンチャーなのです。PCではシリコンバレーが中心地になりましたが、ポストPCではケンブリッチも重要な場所になるように思います。実際、シリコンバレーでは汎用プロセッサコアの設計はほとんど行われていないのでは(MIPSぐらいでしょうか)。人材流動性の高さは重要ですが、プロセッサのようにひとつのものを作り上げるには高い流動性がいいとはかぎらないことなのでしょう。

2012年3月6日

SI業界の方々と世間話でSI業界の将来について議論。興味もないので黙っていたのですが、次のことだけ答えて退散「SI業界を料理業界で喩えると、自分で料理を作ったこともない人がレシピを書いていて、本人が試食もしてないレストラン」。何を言いたいのかというと、SI業界は上流と下流に分けようとした結果、多くの上流SEというレシピ作者は、料理を作るのは他人任せ、つまり下請け企業任せ。だから料理を作るとき、つまり開発するとき何が難しいのかもわかるはずがなく、結局、人月計算という作業の難易度ではなく、人出の数でしか開発の手間がわからない。さらにレシピに従ってできた料理を食べたことがないわけで、それが本当においしいのかはわからない。いいかえればシステムを使う立場ではない、システムの使い 勝手とか、本当に業務にあっているのかはわからない。そんなレストランで食事をしたくないし、そのレシピを書いた人を雇いたいかと問われたら、誰もイエスとは答えないでしょう。

それでも、いま下流と呼ばれる工程を経験した上流SEは(料理人を経験した方は)、多少は開発勘が働くかもしれませんが、ただ使ったこと(食べたこと)はないので使い勝手がいいシステムが設計できるはずもない(おししい料理が作れるはずもない)。さらに哀れなのは上流しか経験のない、40歳以下のSEさんは気の毒というか、つぶしがきかないというか、そのキャリアが他業種からは必要としているわけではないので、キャリアとして評価できなくなりやすい。

2012年3月5日

エルピーダの破綻以降、半導体絡みの話が多くなっていますが、時代の転換点なのだと思います。DRAMというとPCが主要マーケットだったのですが、ひとつにはPCに対する性能向上要求が弱くなって、メモリの大容量化の速度が落ちてきていること。その一方でスマートフォンやパッドなどの簡易端末が急速に伸びてきているが、こうした端末の搭載メモリはPCと比べると少ない。そしてクラウドコンピューティングが進み、PCという端末の高機能化よりも、データセンターの高機能化が重視されるようになっていること。もちろんDRAMが需要は今後ともあるわけですが、メモリに対する要求が変わってきていますね。

2012年3月4日

今日も休日出勤。カメラの話題が続きます。3月1日にコダックがリバーサルフィルムから撤退を発表。御存知のようにコダックは破産法を申請しており、事業整理は必死だったわけですが、さすがに残念ですね。コダクロームに続き、エクタクロームも消えることになります。富士フイルムのリバーサルフィルムと比べると、コダックのリバーサルフィルムは彩度が低くく、やや青みがかかるのですが、その一方でカラーレンジが広いために色に対する忠実性が高いのが特徴実際、人物を撮るとコダックのリバーサルフィルムの肌が自然。被写体本人の肌と比べてみると、富士フイルムのリバーサルフィルムは記憶に残りやすい色を協調するので、色の違いに愕然とすることがあります(ベルビアはもちろんのこと、アスティアでも違いが� ��ます)。富士フイルムもリバーサルフィルムを整理し始めており、数年先には数種類になってしまうかもしれませんね。なお、当方も実は最近はデジタルの比率が高くなっています。

2012年3月3日

休日出勤。今日発売の日経ヴェリタスにカラー顔写真が大きく出ているらしい。どこで手にれればいいのやら。さて、ちょっとカメラのこと。キヤノンからEOS 5D-mkIIIが発表になりました。前機種の5D-mkIIを使っている身としては気になるはずですが、お値段もさることながら重い一眼レフはもういいかなぁという心境。液晶画面よりは光学ファインダーの方がいいと思いますが、やっぱり重いと疲れます。それに重さとおおきさ以外で5D-mkIIで不満があるわけでないし。むしろ富士フイルムのX10かリコーのGXRあたりの方が気になります。富士フイルムのX1pro もいいとは思いますが、ミラーレス系レンズ交換式はレンジファインダーカメラで十分だし、X1proはボディが大きいとわかって興味がなくなりました。まぁ、勝手にミノルタCLEぐらいの大きさだと思い込んでいたのがいけなかったのですがね。ソニーのNEXもいいのでしょうが、セットレンズ付きNEX-5をお借りする機会があったのですが、個人的なしっくりきませんでした(レリーズタイムラグが大きいのが、個人的にはダメでした)。それにしてもデジタルカメラは数年前から画質的には十分という感じで、あとはデザインや使い勝手的にほしくなるかだけになっていますね。

2012年3月2日

朝から夕方まではお台場の産総研で電子情報通信学会ネットワーク仮想化研究会のお仕事。受付及び座長、それと質問係。夕方から六本木でAmazonのクラウド部門の日本支社創立1周年記念イベントでパネル。一応、パネルは気を遣って脱線しないようにしたつもりですが、結果的には脱線したいたような。それにしても座長仕事からAmazonイベントまでの時間が差がなくて、皆様をハラハラさせたのですが、タクシー移動でギリギリセーフ。一部関係者には移動前後をTwitterで実況までしていただいたようです。

2012年3月1日

某社様が鳴り物出入りではじめているPaaS系のクラウドサービスが、8時間にわたるシステムダウンだったとか。でも世の中的にはまったく騒ぎになっていない。某社のエバンジェリスト様から、数多くの重要サービスに使われているということだったのですがね。それにしてもクラウド系サービスはトラブル・停止時に、どの程度、大騒ぎになるかで、実際の利用状況が見えてきますね。本来だったら、某社様自身も自社アプリケーションをこのPaaS系サービスを使っていないので、自社アプリケーションの停止ということにすらなっていない。今回の状況に関しては、ある意味で残念な感じがしますね。それにしても某社様はこのPaaS系サービスはいったん打ち切って、再出発した方がいいように思います。そして一番怖いのは、組織的と して、ダメな技術やシステムをダメといえなくなっていること。その状況になっていないといいのですが。

2012年2月29日

2月も終わりですね。今月は実証実験があってそれで終わった感じですが、その実証実験絡みを含めて、売り物のデザインを2件(カード6種類と書籍絡み)をすることになってしまいました。デザイナー業は引退したつもりだったのですがね。

2012年2月28日

昨日の続きですが、いまのコンピューティングはPCを中心にまわってきました。ただ、半導体のプロセスの微細化に関わるコストを考えると、PCの需要だけでは難しくなってきます。Intelは開発コードネームIvyでは22nmプロセススケールのプロセッサを出してくると思いますが、その22nmプロセススケールの生産設備のコストを考えると、相当数作らないと設備投資を回収できない可能性がありますし、少なくても採算性は悪くなると思われます。Intelがファブビジネスに乗り出すか、つまり他社のチップの生産代行をはじめることもあるかもしれません。半導体ビジネスは「規模の経済」が優先されてきたわけですが、求められる規模が大きくなりすぎて、誰にも止められなくなっているのかもしれません。実際、22nmプロセススケールの工� �の場合、リーマンショックやタイの洪水のような外的要素でPC需要が落ち込んだりすると、工場の生産量が落ち込んで採算が取れなくなりますし、その額が大きいので経営自体にも響きかねない状況。そうなるとSoCなどの生産量が予測できる製品にシフトする可能性はありますね。まぁ先のことはわかりませんが、ムーア法則は技術的制約よりも、ビジネス的制約が大きくなってきているのでしょう。

2012年2月27日

エルピーダメモリの破綻の続き。ソフトウェア屋とはいえ、次世代のコンピュータを予測するにはチップトレンドは必須で、その絡みを少々。現行のプロセッサは45nmか32nmプロセスを使っています。10年前は45nmや32nmなどの微細プロセス幅は実現不可能といわていたように、実現不可能といわれた微細プロセス幅を実現してきたのは半導体業界。その意味では限界はないのかもしれません(原子サイズ以下は無理ですが)。

ただ、その一方で微細プロセスのチップを作るためのコストは増え続けています。実際問題として32nmで作るには100億円近い露光機が何台も必要。それが揃えられるのはギガファブと呼ばれる巨大半導体工場だけ。採算性を考えると月産数10万枚は最低ライン。ギガファブ自体は相違なチップを作れますが、小回りがきかないので他品種少量生産はできない。これが22nmになるとさらに大量生産しないと採算があわない。

つまり相当枚数が売れるチップでないと32nm以下は難しいということです。昨日も書いたように半導体は微細化すると生産量が増えて、価格が下がります。技術的な理由ではなく、経済的な理由で微細化がすすまなくなります。もう少し具体的に書くと、DRAMやフラッシュメモリなどの汎用かつ大量に売れるチップと、PCやスマートフォンなどの数が出るデバイスに搭載されるロジック回路、つまりプロセッサとその周辺チップ以外は32nm微細化は難しくなり、それ以外のチップは今後、価格が大きく下がる余地はないということです。

もちろん半導体の価格はほとんどはロジックの設計コストとファブの設備投資ですから、それが償却できれば原材料コストに近いところまで価格は下がる余地はありますが、現状の設備費用は高くなっており、32nm程度になると月産10万枚で2年間程度は価格が維持できないと償却はできないでしょう。そうなると数が出ないチップはこの先、プロセス幅が狭くなる可能性は少ないことになります。例えばネットワークルータはPCと比べたら数が売れません。そうなるとルータ用の制御チップはこれ以上、プロセスを小さくして高性能化する可能性が低くなります。

さらに22nmやそれ以下になってくると、サーバ用プロセッサは生産数的に厳しくなっていくでしょうし、PC用プロセッサでもファブの採算はあうにしても、スマートフォンやパッド向けのプロセッサと比べると数が出ませんから、数が出るチップに対してはコスト差が広がる可能性があります。

半導体技術的にはムーアの法則はいきているのかもしれませんが、採算性という経済基軸を加味すると、数が出るチップ以外は有効とはいえないのではないでしょうか。


2012年2月26日

エルピーダメモリが経営破綻。ここまでよくやってきたというところではないでしょうか。DRAMは回路パターン自体は単純でも、微細回路の集まりなので、物性はもちろん、量子力学まで踏み込んだノウハウがないと作れないはず。エルピーダは微細化などではサムソンにやや遅れているところもあったといわれており(試作チップを作るだけで数億円がかかる世界ですから、資金力がないと勝てない。とはいっても20nmプロセスでチップを作れるのはIntel、サムソン、TSMC、エルピーダだけかもね)、円高などの経済要因が直接的な理由にしても、技術競争から脱落したのでしょうかね。それとソフトウェア屋からみると、WindowsがVistaまでは、(順調に)必要メモリ量を増やしていたのですが、Windows 7からは消費メモリ量を増やさなくなりました。その結果、DRAM市場を冷やした部分は否定できませんね。メモリは、半導体プロセス微細化すれば、一枚のウエハから切り出せるメモリの数は、同じ容量ならば増えます。つまり生産数が増える、生産数が増えれば価格が下がるのは経済原則。これまではコンピュータに搭載するメモリ量が増えていった。搭載メモリ量を増やすには、メモリチップ数を増やすか、一つのメモリを容量を増やすしかない。たくさんのメモリチップを搭載したら、コンピュータも巨大になるし、消費電力も増える。このためメモリチップ一つの容量を増やしてきた。容量の大きいメモリチップは回路面積が増えるので、一枚のウエハから切り出せるメモリの数は減ります。微細化されてもチップ生産数はそれほど� �えないので、価格は大きく下がることはなかった。現状のメモリビジネスは、需要拡大の速度より、生産性の向上速度が早くなってしまっており、これを修正しない限りは先はない。最後に1社が残るまで、この不毛な競争は続くのでしょう。そして最後の1社になれば価格も生産量も主導権が取れるようになるはず。

2012年2月25日

オフィス近くに書泉グランデという書店があります。コンピュータ書の取り揃えでは国内一番といわれた大型書店ですが、昨秋に売り場改装があってコンピュータ書は一掃。鉄道や自動車など趣味向け書籍の店になって、足が遠のいていたのですが、怖いもの見たさに行ってみると、以前、コンピュータ書籍の担当者だった方がおられたので、改装経緯を伺う。経営会社が変わったなどもあったものの、コンピュータ書籍はネット書店で買われる方が多いので、実書店は辛いという話。確かにそうかもしれません。ということで退散してきたのですが、電子書籍まで考えるとどうなのでしょうか。電子書籍の普及で問題になるのは、実書籍の販売への影響。それを考えると実書籍として刊行される書籍の電子化は、実書籍の販売の影響は� ��しい。一方で趣味向けの書籍の場合は雑誌のバックナンバーや絶版書籍でもほしい人はほしいのですが、こうした雑誌のバックナンバーや絶版書籍は現状の実書籍や雑誌の販売への影響は少ないので、電子化する障害が少ない。そうなると趣味向けの書籍は電子化されやすいと見ることもできます。

2012年2月24日

続き。ARMやAtomサーバの話ではXeonサーバとの対比になりやすけど、ARMコア vs. Xeonのような対向図式に立つべきではないです。同じ処理でも、普段はAtomコアやARMコアのサーバで動かして、負荷が高いときだけはXeonなどの高性能サーバを使う方法もあります。それとXeonの性能は高いが、今後、メニーコア化が進んだ場合、各コアの性能があがるとは限らない。Intelが6月に公開したメニーコアプロセッサのプロトタイプの48コアだが、各コアは昔のPentium相当。製品版は新規にコアを開発すると思われるが、現行のXeonよりも速いコアが搭載するする可能性は低いはず。NVIDIAなどのGPUベンダーがARMと協業してきているので、低い性能をGPUで補う場合もありえます。

現状、Xeonのサーバ性能が高すぎるために、仮想化して複数サーバを一台の物理サーバに集約したり、Googleのように仮想化を使っていない場合は、相違なサービスを一つのサーバで運用することが多い。逆にARMやAtomのサーバは専用機化する可能性があります。その意味ではアプライアンス化する可能性はあるし、処理内容に応じてシステムを最適化する方向に進むのではないでしょうか。

ただ、ARMコアのサーバは思ったより導入事例がでていきていないように思います。。その背景は64bit版のARM待ちになっているからでしょう。2012年の出荷予定の、ARMv8アーキテクチャのX-Geneは64bit、最大動作周波数は3GHz、10GbpsのEthernetを搭載。NVIDIAも関わります。IntelはQLogicを買収して、XeonとInfiniBandの組合せを前面に出してくると思いますが、HPC系ではなく消費電力重視となるデータセンターの場合はどうなるかはまだわかりません。いずれにしても技術屋は保守的なので、新しい技術には用心深い。実導入までに検証に時間がかかっています。一番先がいいとは限らない。他社の大型導入事例がでて、そこの稼働状況をみてから判断すればいいという読みも働いているのだと思う。それとメモリの問題。32bitでは4GBとしかメモリ空間をとれ ない、短期的にはCortex-A15で40bitで解消されましたが、やはり64bitを望む声が多いのでしょう。それと実は大きな懸念材料は筐体の問題。これまで違い、マザーボードにプロセッサを一つか二つという構成ではなく、多数載せられますから、根本から変えていかないといけない。要件も整理にも時間がかかるはずで、マザーボードの規格が収斂するのはその先になりそうですね。

2012年2月23日

ARMコアやAtomコアなど省電力型スモールコアサーバの取材。実際、取材は先月だけど。

AtomとARMは戦略が違う。ARMはSoCということが大きい。サーバの要件にあったIOなどの周辺回路をいれたチップを作ればよく、消費電力的にも設置面積的にも有利。なお、設置面積が小さいことは面積あたりのサーバ数を増やせる以外に、通信距離の短い伝送系をつかる余地があります。逆にIntelはSoCを嫌がる。これは組込系では大きな違いですが、省電力サーバでも大きな違いになってきます。

省電力型スモールコアサーバは処理内容的にみていくと、AtomコアやARMコアのサーバは軽い処理を大量に実行する用途に向いていますが。例えばフロントエンドのWebサーバーは大量のリクエスト裁くことが重要であり、性能よりも数が重要であり、AtomコアやARMコアのサーバを大量に並べて処理することが想定されます。特にクラウドでもPaaS系は比較的、小さいサービスを想定しており、AtomコアやARMコアのサーバでも十分でしょうね。

それと消費電力は二重苦。一つ目は電気代。サーバの購入費よりも電気代の方が高い。もうひとつは環境対策。日本では震災以降はCO2排出量削減は関心が薄れているが、Googleなどは消費電力のうち、火力発電所などによる電力分だけ再エネルギークレジット(日本ではグリーン電力証書が相当)を買って、CO2排出量を自主的にオフセットしている。消費電力そのもの以上にコストがかかっている。海外のクラウドコンピューティング事業者は日本で思う以上に持続可能性世界を意識しているんですよね。

2012年2月22日

午前中は総務省の研究助成予算の監査中。最近は研究予算でも監査法人が入ることが多くなりました。指摘されて困ることもなく、お任せするだけ。ただ、事務方は準備でたいへんだったはずで、感謝です。夕方から某経済新聞の取材。

2012年2月21日

書類作成に追われる。

2012年2月20日

ある書籍の販促用の帯のデザインをする事態に。商業デザイナー業は引退したはずなのですがね。

2012年2月19日

Microsoftが作ったGoogleのGmail批判のビデオがおもしろい、というか冗談になっていないので笑えないわけですが。世の中はビッグデータと騒いでいますが、メールはもちろん、個人情報の分析は諸刃の剣ですね。これからのデータ分析で難しいのは、例えばメールだけといように、同一種類のデータによるプライバシー漏洩ではなく、相違な種類のデータを組み合わしたときに起きる問題。2001〜2年ぐらいに、東京都水道局と東京ガス他がメータの共用化の実証実験をしようとしたことがあります。水道、ガス、電気の使用量を測れるPHS内蔵のインテリジェントメータを作って(いまのスマートメータそのもの)、それを100軒程に設置したのです。ただ、プライバシー問題の懸念から実証実験は打ち切り。水道の使用量だけをみても個人の行 動はわかるとはいえない。同様にガスの使用量だけをみても個人の行動はわかるとはいえない。でも二つの使用量をいっしょにみると、例えばお風呂を焚いているなどの個人の行動が推定できてしまうのです。ビッグデータのプライバシー問題を騒いでいる人はいっぱいいますが、そのほとんどは単一種類のデータによるプライバシー問題を騒ぐ程度。本当に怖いのは、違う種類のデータの組合せ。ただ、その組合せは予測できないんですよね。

2012年2月18日

休日出勤。実証実験が終わって休みたかったのですが、勤務先の業務執筆。

2012年2月14日

実証実験の撤収は前日に終わらせたので、今日から結果整理。ただし、さすがに疲労困憊です。

2012年2月13日

実証実験の最終日。おかげさまで950枚ほどのカードを販売させて頂きました。ありがとうございます。

2012年2月12日

実証実験の4日目。日曜日なので、すごい人出。ただし、18時過ぎからは減りましたね。

2012年2月11日

実証実験の3日目。土曜日ということもあってすごい客入り。250枚ほど買って頂く。実は当初予定は5日間通して、200枚程度の販売予測で、カードの印刷も各カード100枚で600枚だったのですが、3日には当初印刷分がはける。凸版印刷と三菱UFJリースにお願いして、カードの印刷と排出権の追加。

2012年2月10日

実証実験の2日目。今日は新聞取材とNHK取材。流石に金曜日ということもあって200枚ほど買って頂く。ありがとうございます。

2012年2月9日

今日から実験。売れない、売れないといわれたカードですが、おかげさまで150枚ほど売れる。実は売れなかったら全責任を取るつもりで、全6種類のカードのデザインをしたのですが、意外にまんべんなく買って頂きました。ありがとうございます。

2012年2月8日

明日から、そごう横浜店/8階バレンタインチョコ催事場で実証実験をします。お近くの方はお越しいただければうれしいです。詳細はこちら。

2012年2月5日

先日、SI事業者の方と、SI業界の今後について話題になったのですが、その方は上流と下流に分かれた業界構造に疑問があるそうですが、確かにそのとおりですが、

2012年2月4日

休日出勤。

2012年2月3日

来週の実証実験の関係で、流通関係者から当該分野の状況を伺う。そこで話題になったのは昨年のホワイトデー商戦。ご存知のように東北大震災でまったく空振りになったあげく、通常時のチョコレートの売り上げが急減したままで、今年のバレンタイン商戦も厳しいという話。もちろん、あれだけでの災害ですから、元に戻ることはできない。それは震災地域はもちろん現実なわけですね。

2012年2月2日

講演を頼まれたのですが、調査会社の方からの質問に驚かされる。いまの科学というのは仮説を立てて、それを検証するための実験や調査をすることの繰り返しなのですが、その方の場合は仮説は立てられないという前提での質問。もちろん立場はあるとは思いますが、仮説も立てずに調査をするというのは科学的とはいえないような気がするのですがね。

2012年2月1日

博士課程の入試、それから横浜方面に外出。

情報・電機系メーカの赤字決算発表が続いていますが、同じ赤字でも収益が確保できそうなところと、総崩れのところにわかれますね。もちろん一番心配なのはあの会社ですが(本当にまずいそう)、他にも気になるところがありますね。例えば液晶や太陽電池を柱にしているメーカもありますが、半導体的にいうと、液晶も太陽電池も微細回路を使うわけではない。もちろん原材料を含む物性はノウハウの塊ですが、発色性や発電効率を気にしなければ大規模な生産設備があれば作れる世界。つまり設備投資額次第の業界なので、財務的に苦しくなると脱力していきます。

液晶はテレビの需要が落ちてきていますし、大画面テレビは価格の問題というよりも、大画面テレビをおくスペースがなければ買わない商品。つまりそこそこの大きさの液晶しか需要は拡大できないわけで、あとは価格競争が待っているだけ。太陽電池も発電効率は低いよりは高い方がいいですが、安価だけど効率が低い太陽電池を多目に設置するのと、効果だけど効率の高い太陽電池を必要分だけ買うのとどちらが特なのかという世界。現状では屋根が足りなくなるほど設置している例は少ないわけで、後者よりも前者が安く上がれば前者でよい。

2012年1月31日

ビッグデータ絡みの取材。当方を取材してもしかたないと思うのですね。こうした取材で必ずきかれるのがビッグデータの定義。だいたいビッグデータって、メディアが作った総称であって、定義なんてない。教科書的な答えをいうと、大量データまたは非定型データに対する分析処理とかになるのでしょうが、これもよく考えると矛盾しています。まず元データが大量であるか否かは本質的な問題ではない。例えば1GBのデータでも、100万レコードぐらい要素があったら、絶対量は少なくても大量データに近い。それに100万レコードのデータでも、その分析過程で組合せ的な処理をすれば100万×100万程度のデータに簡単に膨らみます。それと非定型データに対する分析も変。非定型データは定型データに変換してから分析することが多く� �非定型データをそのまま分析できることは少ない。

MapReduceやHadoopにしても、現実は集計処理などのビッグデータとはおよそ関係ないスモールデータ処理に使われることが多いし、仮に大量の非定型データを扱うにしても、それは非定型データは定型データに変換するという前処理のためであって、データ分析そのものに使っているかという微妙。

2012年1月30日

打ち合わせ外出。ありえないほど忙しい日々。

2012年1月29日

休日出勤。 デザイン仕事、いったい何をやっているんだろうかという感じですがね。

2012年1月28日

午前中は休日出勤、午後は外出。

2012年1月26日

NECが2012年3月期通期連結業績予想を下方修正し、当期純損益が1000億円の赤字に陥る見通しになるとか。総崩れに近い状態のようですが、事業再編を繰り返した結果が、儲け口を減らしてしまったのでしょうかね。携帯電話向けの基地局以外に儲け口があればいいのですが、それだけだとちょっときびしい。

2012年1月25日

ちょっと前ですが、SI業者のSEさんと打ち合わせで思ったことを少々(そろそろ時効でしょうし)。昔はやり手のSEさんだったそうですが、システムの構成や実装が見えていない。内容的にはデータの取り扱いに関わる軽微な変更(むしろ実装は簡単になる)に関してだったのですが、たまたま外注先の開発担当者も同席していたので、その方と変更を詰めて一件落着。

気になったのはSI業者のSEさん達はその変更の意図も実装もまったく見えていない感じ(普段、学生さんの相手をしているから、わかった人と、わかったふりをしている人の区別はつきます)。

SI事業の先行きが不安視されています。上述は極端な例にしても、SEさんの劣化が最大の問題ではないでしょうか。上流に特化するのは結構ですが、上流ばかりみていると実装勘がなくなるんですよね。実装勘がないと、仮に要件はまとめられても、それを設計に落とし込めない。結局、顧客と外注先のメッセンジャーでしかない。それでも過去に実装に関わっていた連中は、技術が大きく変わっていても、実装勘は残っていたりします。問題というか、哀れなのは入社したときから上流ばかりやるようになった世代。

実はその打ち合わせのあとで、SI業者のSEさん達と日本のシステム開発の問題が話題になったのですが、そのとき指摘されたのが、ユーザ企業がSI事業者に丸投げなので、ユーザ企業がIT部門が育っていないという、自虐なのか、ずれているのかわからない見解。確かにユーザ企業も丸投げなのですが、気がつくとSI業者のSEさんも下請けに丸投げで、育っていないのはユーザ企業だけなのでしょうかね。

2012年1月24日

今日もデザイン仕事。今度は販売ツール群。先は長い。ところで昨年のパリに行ったときの写真をWebにおいてみました。

2012年1月23日

IntelがQLogicのInfiniBand事業の買収するそうですね。InfiniBandはHPC系では広く使われるネットワーク。おそらくIntelはEthernetコントローラとともに、プロセッサの周辺チップにInfiniBandの回路をいれてくるのでしょう。これでInfiniBandの価格が下がるでしょうし、HPC分野だけでなく、エンタープライズ向けでもInfiniBandを使うことが増えてくるでしょう。SANの高止まりが改善されるといいのですが。いずにしてもHPCやハイエンドサーバは当面はIntel中心に回るのでしょう。ただ、その一方でHPCやハイエンドサーバが先端ではなくなっている可能性もあるわけで、時代はどんどん進んでいきますね。

2012年1月22日

休日出勤。ほぼ徹夜でデザイン仕事。売り物を6個のデザインですが、別のデザインにして、さらにクオリティをそろえるところが難しい。一個だけ飛び抜けたデザインならば苦労しないのですよね。

2012年1月21日

休日出勤。それもデザイン仕事。来月、某デパートで販売する商品のデザイン。売り物のデザインは久しぶり。なんというか、昔から研究者をしていたわけではないわけで。

2012年1月20日

秋入学にするのもいいのだけど、入学時期を変えたからといって海外からいい学生が集まる保証はないわけで、むしろ現状の就活の状況を打開することの方が意味が大きいのでしょうね。いわゆる難関大学は追随するかもしれませんが、それ以外は未知数。いずれにしても入学時期を半年変えるという変化をレバレッジで世の中を変えられるのか。唐突に秋入学の話が出してき感じあるところは感心しませんが、大学から投げられた、世の中を変化させる一石としては意味を持つように思います。

2012年1月19日

昨日に続いて千代田区内を移動する日。

2012年1月18日

千代田区内を移動する日。

2012年1月17日

いつからデータベース=RDBMSになったんですかね。どうせ中途半端なSQLしか書かないんだったら、RDBMSに拘る必要ないし、O/Rマッピングで苦労することもない。オブジェクト指向データベース(OODB)の方が素直でいいと想うことも多い。ただ、OODBはRDBを凌駕することを期待されながら、消えていったのですよね。ただ、ソーシャル系データを扱うときは下手にRDBに記録するより、OODBを使った方がいい場合もおおいような気がします。

2012年1月16日

秘密の仕事の結果をお国に提出。一件ぐらいわくわくするようなものに出会えるかと思ったのですが、淡い期待でした。まぁ、この仕事は片付いたので来月の実験の準備に戻ります。

2012年1月15日

今日もお国の秘密の仕事のため休日出勤。ただし、勤務先は17時まで停電なので夕方からの出勤。

2012年1月14日

お国の秘密の仕事のため休日出勤。勤務先経由の仕事だけど、兼業扱いになっているので、休日にすることに。それに法定休日数的には勤務先は関知しないという言い訳になるらしい。ブラックな感じもするけど。

2012年1月13日

国際会議のカメラレディ論文2本仕上げて、送付。どちらもSpringerからでる同じシリーズの論文集ですが、なぜか参考文献の指示が違う。ひとつはLaTeXのbibitemを使えという指示があり、もう一方はbibtexを使えという指示。ひとまずそれぞれの指示に従って作りましたが、どちらかが間違っている可能性が高く、書き直しをありかも。

2012年1月12日

ビッグデータの続き。ビッグデータの報道でいつも疑問なのは、データ分析の結果、予想もつかなかった特性が見つかって、それでビジネスチャンスを広げたという話。いわゆるビッグデータの分析は仮説検証がベース。ある特性があると仮説を立てて、その特性を調べるための分析をして、その特性があるかを検証することの繰り返し。つまり特性をある程度、予想できていることが大前提で、予想していない結果が見いだせたというのは、まずありえない。というのはビッグデータのようにデータ量が多く、多様になると、個々の特性に応じて分析対象と分析手法を選ばないといけないのです。まぁ、記事にするときはインパクトがないので仕方ないのですが、それを真に受ける人が少なくないでしょう。実際、ビッグデータの案件� ��伺うと、現場が気づいていた特性を数字として確かめるとか、現場はよくわかっているのに、数字を出さないと納得しない経営陣を説得するためだったりすることが多かったり。ビッグデータがいいのかはよくわかりませんが、現状に満足せず、積極的にビジネスチャンスを見つけるということにつながればいいのかもしれません。

2012年1月11日

ビッグデータの取材が多いのですが、困るのはデータを集まればいいという誤解。実際、生データや細かいデータがいいとは限らないのですよね。例えば街中の歩行者流量を予測するために、街中に何らかのセンサーを設置して、歩行者流量を1分おきにサンプリングしたデータと、1時間おきにサンプリングしたデータがあったときに、実際に分析すると前者が後者よりも精度がいいとは限らない。というのは1分程度サンプリングだと、交通信号などで流量にムラが出るのです。また、イベント、例えばスーパーで大安売りや学校行事などで歩行者流量は大きく影響します。そうしたムラやイベントを排除して、予測するには対策としては二つあります。ひとつは交通信号による変化補正して、イベント情報を集めて、補正をかけること� ��す。もう一つは1分おきにサンプリングしたデータを平均化して、ムラを打ち消す方法です。ただし、統計多重でムラを打ち消すには相当数のサンプリングを平均化しないといけないので、1時間おきにサンプリングするのと大差なくなるかもしれません。ここで気をつけないといけないのは1分おきにサンプリングしたデータの精度。一般に高速なセンシングは誤差も多く、精度が落ちます。しかし、その誤差にクセがある場合はそれを統計多重で消せるとは限らないです。何が言いたいのかというと、生データがあるならばそれに超したことないかもしれませんし、サンプリング間隔が短ければそれに超したことはないかもしれませんが、それがいい結果を生み出すとは限らないということです。

2012年1月10日

研究予算について考えさせられる仕事をしているのですが、研究者は予算プロポーザルを書き、研究費を獲得していきます。ただ、研究のために予算をとっているはずなのに、いつのまにか予算を取りたいから研究しているようなプロポーザルを書く人も出てきます。さらにその研究費も短い期間に研究成果を期待してきます。そうなると本来は5年先、10年先を見通して重要と考えられる研究をすべきなのですが、短期的かつ成果の上がりやすい方向に研究が誘導されていってしまう。学生さん達もそういう環境で育っているので、長期的視野の研究へのインセンティブが落ちていくんですよね。研究費が取れる研究者が偉いわけではなく、研究で評価すべきなんですよね。

2012年1月9日

休日出勤。業務執筆。

2012年1月8日

休日出勤。業務執筆。

2012年1月7日

ちょっとだけカメラのこと。ニコンが同社のデジタル一眼レフのフラグシップモデルとなるD4を発表。スペックは既知になっていましたが、ニコンファンを大騒ぎなのでしょう。昨年、キヤノンが発表した1DXに対して画素数や連射速度では劣るものの、ニコンのことですから、D4はトータルな使い勝手は1DXよりいいのかもしれません。とはいえ大きなカメラは欲しくないですがね。個人的に気になったのは同時に発表された単焦点レンズNIKKOR 85mm-F1.8の方(現行の85mm F1.8は線が固かたいですよね)。取材のインタビューなどでは同じ85mmでもF値が小さいNIKKOR 85mm-F1.4で取られることが多いのですが、撮影される側からするとF1.4以下の大口径レンズは緊張するんですよね。いちどインタビュー中をキヤノンの85mm F1.2Lで撮られたことがありますが、大きく、そしてLレンズ特有のガラスが気になったのか、目が泳いでいるとカメラマンに指摘されたことがあります。

2012年1月6日

いろいろ打合せ他。ところでTwitterは、ハイデッガー流にいえば待合室で待つ人が時計を頻繁に見ることで時間を埋めるかのように、今の活動(例えば仕事)に退屈している人が、その退屈さを埋めるためにツイートを見たり、書き込んでいるところがありますね。「忙しい」は感覚なので、たぶん熱中していたら忙しいと感じることは少なく、むしろ退屈しているから忙しいと感じるのでしょう。

2012年1月5日

Kodakの経営危機がニュースになっていましたが、Kodakといえば、創業そのものは19世紀末ですが、写真や映画のフィルムという20世紀を代表する技術を広めた企業(ロール型のフィルムとカラーフィルムはKodakが最初)。ただ、倒産回避のためにデジタル関連の特許の売却を狙っているそうですが、そうなると実質、同社に残るのはフィルム事業だけ。再び経営危機になるのは時間の問題。Kodakの経営陣はそこまでしてフィルム事業を延命したいのですかね。

2012年1月4日

世の中は仕事始めらしいのですが、そもそも年末年始に休みがある仕事でもないのでピンとこない。それから新年の挨拶とか今年の抱負とかをメールしてくるのはやめてください。頂くのはありがたいのですが、お互い時間をセーブしましょうね。

2012年1月3日

通常業務。au版のiPhone 4Sが不調で、ランチのついでにオフィス近くのauショップに持ち込み。オールリセットで治ったものの原因不明。正月休み中で暇だったのか、auスマートフォンのいくつかのトラブル対応マニュアルを見せてもらったのですが、スマートフォンは売るのも難しいですが、トラブル対策もたいへんですね。また対応を考えると店側としては機種は増やしてほしくないそうです。特にiPhoneに関してはお店利益が低いこと以上に、トラブル時の対応が、Apple側に依存した部分があり、お客様にそれを説明することを考えると売りたくないご様子。たいへんですね。

2012年1月2日

通常業務。個人的にはテレビは見ない。普段は月間で15分も見ていないと思います(昨日は年に一回あるかないかという例外)。とはいえ本当は結構、テレビ好きだし、一応、大きな液晶テレビもあるのですがね。見ない理由はテレビがつまらないという理由よりも、時間を作りたいから。一人一人に割り当てられた一日の時間は24時間。それを増やすことはできない(世界中で地球の時点方向と逆に進まない限り)。忙しくなれば何かの時間を諦めないと時間は作れない。当方にとってその諦める対象がテレビを見る時間だったというだけ。忙しいを口にする人は多いのですが、何かの時間を諦めなければ時間はなくなりますよね。

2012年1月1日

休日。今年もウィーンフィルのニューイヤーコンサートを見る。指揮は2006年以来、二回目となるMariss Jansons。2006年の時は巨大携帯電話を持ち込んだり、楽団と掛け合いなど楽しさいっぱいでしたが、今回はそれ以上に小道具をいっぱい持ち出し、楽しさを前面に出していましたが、演奏は非の打ち所がない。ここ数年レベルが上がっていますが、ベストワンといっていいのではないでしょうか。毎年、カメラワークはいいのですが、今年は映像的に最高レベル。それとバレエがよかったですね。ルグリがバレエ団芸術監督になって、単調さがなくなり艶が出たというか、よくなっていますね。彼はいずれはパリオペラ座芸術監督になるのでしょうが、それまでにウィーン国立バレエ団が相当の肉薄するかも。

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